「コスパ最高」とも 中高一貫の小石川、未来人を育成
都立小石川中等教育学校の梅原章司校長
同校の図書館。調べ物や自習で常に生徒がいる。「教員も生徒も小石川フィロソフィーに追われて、とにかく忙しい」(梅原校長)という。小石川の教員は約2万人の都内公立中高の教員の中から公募などで選ばれるため、「やる気があり、能力の高い教師が集まっている」という。
国際科学オリンピックに次々挑戦

お茶の水女子大学と小石川が連携した生物実験講座=同校提供
理数教育にも熱心だ。かつて同校の隣には理化学研究所があり、小石川高校時代から理数に強い学校といわれた。現在は早稲田大学やお茶の水女子大学などと連携し、「大学の実験室を使わせてもらって、生徒たちは自分たちの仮説を実証したりしています。近くにいい大学が多いですから地の利があります」(土方副校長)という。東大教授のOB研究室訪問も実施。数学や物理、化学、生物、地学の国際科学オリンピックにも生徒たちは次々挑戦している。
「各分野で全国大会に進んでいますが、今年は地学オリンピックやロボカップジュニアの世界大会に出場する生徒がいる」(梅原校長)という。灘高校や筑波大学付属駒場高校の「神童」も国際科学オリンピックに熱心な生徒はいるが、小石川は校舎に垂れ幕を掲げるなど、全校をあげて出場者を応援している。
国際理解教育も本格的だ。2年生の時に2泊3日の国内語学研修、3年生時は2週間のオーストラリアでの海外語学研修、5年時はシンガポールで海外修学旅行を実施する。原則として全生徒が参加し、オーストラリアではホームステイもやる。公立中高一貫校でここまで海外研修をやる学校は珍しい。
21世紀型の人材教育 渋幕と並ぶ評価
教養教育や国際科学オリンピック、海外研修――。そんなことより受験勉強に力を入れた方が、進学実績を伸ばせるという指摘もある。だが「今、21世紀型のグローバル人材教育をしっかりやっているのが、小石川と渋幕(渋谷教育学園幕張中学・高校)といわれる。20年から大学入試制度が一変し、ペーパーテスト一本から面接や小論文、英語もスピーキングが加わるとされるなか、両校はこれにマッチした教育をしているモデル校的な存在だ」(大手進学塾幹部)。

中学3年で実施する小石川の海外語学研修の様子(オーストラリア・アデレード)=同校提供
梅原校長も「確かに20年の大学入試改革は有利になると思います。教養、理数、国際の3本柱の教育が奏功すると考えています。先日も保護者の方から、『子どもに学ばせたいと思っていることをすべてやってくれる学校』などと言われました」という。
小石川の魅力は単純に公立中高一貫校として進学実績が全国トップクラスになったというだけではない。教養、理数、国際というグローバルリーダーの育成に不可欠な教育を実践していることだ。20年の大学入試改革を見据えて、未来の人材を育成する小石川。真価が問われるのはこれからだ。
(代慶達也)