さらばウェルチ SAP、ネット世代生かす交流型考課
独SAP最高人事責任者のステファン・リーズ氏
――なぜ、変えたのでしょうか。
「継続的なコミュニケーションにより、マネジメント側と社員のつながりが強くなることが統計的に明らかになっています。人のモチベーションがあがるのはどんなときでしょうか。年に1、2度の評価で、もし結果がよければ問題ありませんが、悪い場合は『この上司は本当に見てくれているのか』と納得性や透明性に不満を持つでしょう。モチベーションが上がるのは、ちょっとしたその日の業務でうまくいったことを評価されることなのです。そういうことの積み重ねで、信頼関係が生まれます」
「また、我々はIT(情報技術)企業です。その計画を実現するため、使い勝手がよくて直感的に使えるアプリケーションを作り、離れていても継続的な対話ができるしくみを作りました。それが、『SAPトーク』です。トレーニングを受けなくても普通のアプリと同じように使いこなせる。特に、ミレニアル世代はLINE(ライン)や、フェイスブックのメッセンジャーなど、対話アプリに慣れているので、親和性もあります」
ミレニアル世代主導で「働き方」変えよ
――海外から日本の労働環境や若い世代の人材育成を見て、どんな課題が浮かびますか。
「会社として臨機応変な働き方をいかに支援していくか、より考える必要があります。長い時間、オフィスにいなくても仕事はこなせるし、貢献できます。新しい技術を使えば可能です。また、マネジメントは社員のワークライフバランスを維持する責務があります。人間は、ずっと働きづめは無理で、必ず充電の時間が必要です。何より、人生を楽しみ、個人の生活が充実すれば、イノベーションも生まれやすくなります」
「テレワークなど、日本の会社も制度やしくみはかなりできてきています。しかし、『文化』が以前のまま。掛け声がかかっても、トップ・ミドル層が自ら実践しなければ、部下は本気だと思えません。また、これまで仕事一筋できた人が、空いた時間をどう過ごしたらいいのか、本当にわからないミドル層が多い。だから、会社にいるほうが楽になるのです。ミレニアル世代の人たちは非常に柔軟で、仕事もライフも充実させる志向が強い。その点でも、彼らが上司によい影響を与えられるのではないでしょうか」
独SAP最高人事責任者。バイエルン生まれ。コンスタンツ大で経済学修士取得。マイクロソフト、コンパック(当時)などを経て02年、SAP入社。16年、エクゼクティブボードに就任、現職。
(松本千恵)