「空気を読まない」孫さん 久留米大付設の精神継承
三木雄信・トライオン社長が語る(下)

教育ベンチャー、トライオン(東京・港)の三木雄信社長(44)が語る、私立久留米大学付設高校(福岡県久留米市、通称「付設」)の思い出。ソフトバンクに入社し、付設の先輩、孫正義社長の秘書をつとめた後に独立し、ベンチャー起業家として頭角を現した三木氏。その三木氏は、付設から起業家が次々と生まれる理由は付設のモットーにあると指摘する。
「和して同ぜず」の精神を学んだ。
付設のモットーは「和して同ぜず」。これは論語の「君子は和して同ぜず、小人は同じて和せず」から来ていて、「すぐれた人物は協調はするが、主体性を失わず、むやみに同調したりしない。つまらない人物はたやすく同調するが、心から親しくなることはない」という意味です。
私の在学中も、校長先生をはじめ多くの先生が、あいさつなどでよく口にしていました。付設の卒業生なら誰でも知っている付設の重要な教えです。
これを現実の社会やビジネスに当てはめれば、人と同じことはするな、社会の大勢に従うな、上司だからといって無条件に言うことを聞くな、むやみに空気を読むな、忖度(そんたく)するな、といったところでしょうか。
この「和して同ぜず」の精神は、ベンチャースピリットに非常に通じるところがあると思っています。そして、付設出身者のビジネスパーソンには、実際、空気を読まない、忖度しない人が実に多い。孫社長もそうですし、同期で、後にライブドアを立ち上げ、今また復活しつつある堀江貴文さんのビジネススタイルも、忖度とは無縁。もちろん、私自身も忖度は好みません。孫社長は、米国の高校に入るために付設を中退していますが、「和して同ぜず」の精神はしっかりと身に付いていると思います。
付設、東京大学と進んだ三木氏は、三菱地所を経てソフトバンクに入社。孫社長の右腕として活躍することに。
東大では経営学科に進み、ITを使ったリエンジニアリングの研究をするゼミに所属。相当頑張ったら、卒業論文が学部で4人しかいない特選論文に選ばれ、論文が図書館に永久保存されるという栄誉にあずかりました。