「お前ウザい」で覚醒 29歳社長、無気力職場に学ぶ
ミスターミニットの迫俊亮社長(上)
――そこから、どのように社長になったのですか。

迫氏は「ミスターミニットに入った当時、現場の士気は下がる一方だった」と話す
「最初はマネージャーとして現場を回り、惨憺(さんたん)たる状況に唖然としました。本社からは現場感覚ゼロの指示ばかり飛んでくるので、職人やエリアマネジャーらはやる気を失う一方でした。しかし経営陣に意見を言うと、人事で冷遇されるので、言いたいことも言えずにますます士気が下がる悪循環です。しかし店舗に足繁く通ううちに、この会社には高い技術を持ち、お客様を第一に考える素晴らしい社員がたくさんいることを確信しました。経営を立て直すには、彼らの閉塞感を打ち破り、会社のすべてを現場中心に作り直すしかない。そう考えて、ファンドに交渉して営業本部長にしてもらいました。でも目指す改革を一番うまく進めるには、社長になるのがベストだと考え、自ら手をあげ、ユニゾン側も了承してくれました」
小間使いに徹し、信頼を獲得
――「若造」への反発は怖くなかったですか。
「やるしかないと思っていたので怖くはなかったですが、メンターになっていただいた澤田貴司さん(現ファミリーマート社長)に最初にガツンとやられました。『会社の現状と課題、それに対する戦略と、今後のマイルストーンは……』と自分なりに考え抜いた改革プランを説明したら、いきなり『お前はウザい』と。靴修理屋の親父ではなく、三菱商事かマッキンゼーの人間にしか見えないと言われて、ショックでした。澤田さんが言うには、どんなに戦略が正しくても、外から来た若造が、『俺が正しいと思う戦略に従え』と言ったところで誰もついてきません。立派な戦略も、実行されなければ失敗に終わると。それを聞いて、なるほど正論を振りかざす前に、信頼されるリーダーになるのが先なんだと気づきました」
「そこからはひたすら店舗を回り、小間使いのように現場の要望を聞いて回りました。『暑い』と言われれば扇風機を設置し、『棚が欲しい』と言われればすぐ作りましたし、『靴修理の材料がイマイチ』と言われれば、別のサンプルを探して持って行きました。コスト度外視でとにかくスピーディに現場が欲していることを実現することに徹しました。それを半年ぐらい続けていくうちに、現場の雰囲気が変わってきたんです。率直に意見を言ってくれたり、ポジティブな提案をしてくれる人が増えてきました。前経営陣とうまくいかずに辞めた社員も50人以上戻ってきてくれました」