「お前ウザい」で覚醒 29歳社長、無気力職場に学ぶ
ミスターミニットの迫俊亮社長(上)
――信頼を得たあとに初めて戦略が動きだすのですね。

迫氏は「経営戦略が会社に合っているかが重要」と強調する
「戦略についてはロジックの正しさより、その会社に合っているかという適社性が一番重要だと思います。ウサイン・ボルトが9秒台で走れるようになった方法を、普通の人が真似ても体格や基礎体力、練習環境がまったく違うので9秒台では走れませんよね。それは誰もがわかる理屈ですが、ビジネスの世界ではなぜか『グーグルがうまくいったんだったら、うちも』といったようなことが平然と行われています。そもそもグーグルとあなたの会社は違いますよね、という話なんですけど」
「いわゆるエリートが集まる有名企業や外資系コンサルなどでは、ロジカルな戦略がそのまま成功する確率が高いでしょう。それはウィル(やる気)とスキル(能力)が高い人が集まっているからです。彼らはそんなにケアしなくても頑張るし、スキルもあるから結果も出しやすい。プレッシャーをかけてもストレス耐性が強いので潰れないし、外資系はそれで人が辞めても入れ替えればいいだけです。そういうごく一部のエクセレントカンパニーのマネジメントは楽です」
現場は「末端」ではなく「最先端」
「しかし、99%の『普通の会社』には、ウィルとスキルが何かしら欠けた人が大勢いるのです。だとすれば、マネジメントのあり方も違って当然ですが、エリートはそこを見誤ってしまいがちです。普通の会社で現場を盛り上げ、成果を出していくには、トップが『自分が正しいと思うことを社員も正しいと思うとは限らない』と謙虚になったほうがいい。相手から見ればどうなのか、と常に視点をズラしてみることです。現場は、上から目線で見れば『末端』ですが、視点をずらせば組織の『最先端』なのです。僕は行き詰まると、ヒントを求めて現場を回るようにしています。指導に行くのではなく、教えてもらいに行くのです」
――会社の入り口に置かれたイヤーブックでも、現場の社員がヒーローとしてたくさん取り上げられていました。
「僕がインタビューを受けている間にも、お客さんと向き合っているのは現場の社員です。彼らがヒーローとしてスポットライトを浴び、評価され、それを見て周りの人もがんばりたいと思える。僕は、そういう会社のほうが強いと思っています」
1985年福岡県生まれ。UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)卒。三菱商事、マザーハウスを経て2013年にミニット・アジア・パシフィック入社。14年、29歳で同社社長に就任。
(石臥薫子)