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 学院には、理工系の学部や政経学部などの教授が定期的に行う授業もある。学院の専任教員は86人で、ほかに約90人の非常勤講師がいるが、その多くは早大などの大学と兼任の講師や研究者だ。「学院というのは半分大学みたいなところ、だから早熟な生徒も少なくない」(学院OB)という。

早稲田大学高等学院の「70号館」。大学の建物と続き番号になっているのが関係の深さを物語る

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大学受験にあくせくする必要がないせいか、高校生の起業家も次々誕生している。「元祖」高校生社長といわれるのが一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス代表理事の木下斉氏だ。00年、高校3年のときに全国商店街の共同出資会社、株式会社商店街ネットワークの設立に参画、初代社長に就任した。

高校生の起業を容認

木下氏は「事業なんてけしからんという教員もいました。しかし、当時の伴(一憲)学院長ら幹部の先生たちは『生徒が自ら考え、行動することは尊重する』と容認してくれました。だから肩身の狭い思いをせず、自由に取り組むことができました」という。当時、教務だった本杉学院長も「あの頃は高校生で起業なんて考えられなかった。でも、商店街の活性化のためだし、失敗を恐れず挑戦するのが学院生。ダメというより、できる限りサポートしよう、見守ろうという感じでした。その後も、学院から起業家は出ていますし、昨年もIT(情報技術)ベンチャーをつくった生徒もいましたね」という。

「僕も起業しようと思うんですが」。本杉学院長が政経や倫理の担当教員だったころ、相談してきた生徒もいた。株式上場の「最年少社長記録」をつくったリブセンス社長の村上太一氏だ。学院時代は硬式テニス部の主将として活躍していたが、部活帰りに食堂に仲間と集まってはビジネスのアイデアを出し合っていた。政経学部に進学してから起業。11年、25歳のときに東証マザース上場、12年には東証一部上場を、いずれも史上最年少で果たした。

デザイナーで、nendo代表の佐藤オオキ氏やNPO法人テーブル・フォー・ツー・インターナショナル代表理事の小暮真久氏も学院出身だ。先進国と途上国の「食の不均衡」を解消する活動に取り組んでいる。著名な経営者では、KADOKAWAの角川歴彦会長や、東京海上ホールディングスの隅修三会長らがいるが、最近の学院の卒業生は社会起業家タイプが増えている。

模擬裁判プロジェクトも

個性的なリーダーを次々生み出す学院。独自の活動もある。「生徒会でも部活動でもない、生徒を主体としたプロジェクト活動をやっています」(本杉学院長)という。環境や国際交流、模擬裁判、社会連携、教育などをテーマに生徒が自ら問題意識を持って、仲間とプロジェクトを立ち上げ、実際に実態調査に乗り出す。早大や企業、地域社会と組んで改善活動にも取り組む。期限は原則1年。例えば、環境プロジェクトには現在、12人の生徒が参加する。高尾山などに登って水質や生態系の調査をしたり、その結果を分析して地域の人とごみ拾いなどの改善活動に取り組んだりしている。

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