悲しみと前へ フェイスブックCOOの「折れない心」
シェリル・サンドバーグ、アダム・グラント著 「オプションB」
「小さな成功」に目を向ける
(4 自分への思いやりと自信 89ページ)
サンドバーグさんは、書き、自分自身を客観的にみつめ、日常の小さな成功体験に目をむけることで自信を取り戻していきます。本書を読み進めると、その復活の軌跡を追体験しているような気持ちになります。
本書には、逆境に立ち向かう人を支援するため、サンドバーグさんがインターネットで立ち上げたコミュニティー「オプションB」の参加者の経験も書かれています。ドラッグや投獄、愛する人との死別やレイプなど様々な問題や喪失に直面した人たちが、それに立ち向かう力をどう育て、身につけたのか――。心理学者の分析も交えて描かれているのも読みどころです。米国での売り上げは30万部を超え、米紙「ニューヨーク・タイムズ」のベストセラーランキング(ノンフィクション・ハードカバー部門)に現在まで16週連続でランク入りしています。その理由の一つは、こうした具体的なエピソードの迫力と登場人物の魅力にあるといえそうです。逆境を乗り越え、自ら運命を切り開く力「レジリエンス」について深く考えるきっかけとなる一冊です。
(雨宮百子)
◆編集者のコメント 堀川みどり
フェイスブックのCOOである著者のシェリル・サンドバーグさんは、夫婦旅行の滞在先でご主人を突然の心不全で亡くしました。父を失った子どもたちのケア、職場への復帰、シングルマザーとしてやっていくこと……本書には、それぞれの局面で悲嘆や苦しみにどう立ち向かったかが、これ以上なく正直に書かれ、とても感動的です(私は試し刷りを読んで泣きました!)。
サンドバーグさんは、家族の死をはじめとする大きな悲しみは、絶対に「乗り越える」ことはできないが、「抱えながら前を向く」ことはできると書いています。本書には彼女が学んだ逆境に立ち向かうヒントもたくさん書かれています。最後まで(特に夫の葬儀での彼女の弔辞まで)お読みいただけるとうれしいです。
ちなみに表紙に描かれたイラストのブロックは「オプションB」の「B」を表しています。装丁は基本的に各国共通ですが、微妙な違いもあります。これから海外旅行に行かれる方は、ぜひ現地の書店をのぞいて探してみてください。
「若手リーダーに贈る教科書」は原則隔週土曜日に掲載します。