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しかし、退職から3カ月もたたずにAさんの緊迫感は一気に増しはじめます。転職エージェントから新しい求人を紹介される数が激減し、やむなく転職サイトを使い始めたものの、通知すら来ないまま不採用になることが相次ぎ、知らないうちに八方ふさがりの状況になっていたのです。

私がAさんにお会いしたのはちょうどその頃でした。すでに50社以上の企業に応募し、7割が書類選考で不採用(連絡がない企業含む)、残りの3割も大半が一次面接で終了しているとのことでした。また、募集要項があまり詳しく書かれていない求人広告で応募し、面接で初めて年収が大幅ダウンすることがわかった企業は、自ら即辞退していました。

キャリア相談の面談では、経歴や転職理由を伺った後、希望条件をお聞きするのですが、Aさんが最初に挙げた希望条件は年収でした。

「今回の転職で考えている年収はミニマムで1200万円です。現職の1400万円は無理と思っていますが、前職時代の1200万円は譲れない一線です。証券会社に残っていたら1500万円にはなっているはずなので、これでも大幅に譲歩しているつもりです。自分を安売りするつもりはありませんので、ぜひ良い案件をよろしくお願いします」

業界や仕事の話よりも先に年収について、語気強く話されたことが印象的でした。

こだわらないつもりでも、限定的になる「希望条件」

面談で次に質問したのは、業種や仕事内容、役割などについてです。「40歳を過ぎているので、あまり好き勝手な条件で選べる立場ではないですよね。未経験の業界や職種も、あまりこだわりなく検討したいと思っています」という答えでした。ただ、さらに詳しく聞いていくと、いくつかの付帯条件があることがわかりました。

●住宅・不動産業や生命保険・損害保険の営業、サービス業は希望しない
●IT(情報技術)業界や金融業界は専門知識がないので難しいと考えている
●管理職であっても、成果連動型の報酬制度の案件は避けたい
●年齢的に今さら現場で汗を流したくない。知恵を使って組織をまとめたい。経営企画や総務、人事などの管理部門でのマネジメントには自信がある

本人としては、選択肢の幅を広げているつもりでも、ここに「年収1200万円以上」という条件を掛け合わせると、実際には選択肢はかなり狭まってしまっている状況でした。逆に、主体的に希望される業界や職種はあまり明確な回答はなく、「何でもできる分、これだと自信を持って旗を立てられる職種がない点が課題だと考えています」と自己分析していました。弊社から案件をいくつか紹介しましたが、特に最初から年収1200万円が確約される案件が少なく、辞退が続いて疎遠になってしまいました。

最大の後悔は「自分に値札がある」という錯覚

結果的に、Aさんはことし2月、転職サイト経由で応募した会社に無事転職されました。中堅の建築機器商社で経営企画室長という肩書、年収も希望通り1200万円ということだったそうです。ただ、残念ながら7月いっぱいで退職され、先日改めて2回目の転職相談を受けることになりました。

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