慶応SFCの「ゆとり時間」 投資ファンドの糧に
時国司オービス・インベストメンツ社長が語る(下)

社会人になってからはフットサルでも活躍。香港勤務時代に所属していたクラブチームのユニホームは今も大切にとってある
一方、サッカーのほうは、懸命のアピールで22人の中に残ることができ、子供のころからの夢だった台湾代表の舞台についに立ちました。しかも、キャプテンにも選ばれました。途中、想定外のことも起きましたが、こういう柔軟な対応が、受験勉強がないおかげで個々の人材育成により重心を置ける付属校のよさだと思います。
余談ですが、アジア予選と重なったため、私はSFCの卒業式にも慶応大学の入学式にも出られませんでした。大学も最初の2、3週間は欠席。履修申告は、遠征先の中国四川省徳陽市から親にお願いして履修科目を記入してもらい、無事でした。
「ゆとりの時間」「自由研究」で個性が伸ばせた。
SFCが売りにしている英語やITの授業以外にも、私がひそかにSFCの特徴だと思っている授業があります。「ゆとりの時間」と「自由研究」です。
ゆとりの時間は、流行語にもなった「ゆとり教育」や「ゆとり世代」のことではなく、そのずっと以前からSFCで全学年を対象に行われてきた授業です。語学や数学、スポーツ、ディベート、模擬国連の準備などたくさんの選択肢の中から個人の興味や関心に合わせて履修する選択授業で、週1回、1年間続けます。成績はつきません。私は、フランス語や社会人経験のある先生が教える政治経済の授業をとりました。
自由研究は、SFCでどれだけ考える力を身に付けることができたかを見る、いわば卒業論文。先生の個別指導を受けながら、1年間かけて、テーマを設定し仮説を立てリサーチし論文を書き上げます。テーマは完全に自由。「犬は本当に人間を癒やすのか」といったやわらかいものでも構いませんし、硬いテーマでもOK。
私は、高1の時に大きなニュースになったアジア通貨危機を機に、ヘッジファンドに興味を持ち、「ヘッジファンドと短期金融市場に潜む危険性」というタイトルで論文を書きました。ヘッジファンドはある程度の規制が必要だという結論にしました。今の自分の立場を考えると何とも皮肉ですが、自由研究でヘッジファンドへの関心を深めたからこそ、自分は今この会社で働いているのだという気がします。