慶応SFCの「ゆとり時間」 投資ファンドの糧に
時国司オービス・インベストメンツ社長が語る(下)
ゆとりの時間も自由研究も、個性を育み伸ばすことを非常に大切にするSFCらしい授業で、私にとっては、とても印象深い授業でした。
5年前から母校で出前授業をしている。
SFCから生徒にキャリア講座のようなものをやってほしいと声を掛けていただき、年1回だけですが、高校3年生を対象に話をしています。授業では、前半に投資銀行や投資ファンドの話をし、後半は、私がゴールドマン・サックス証券時代にかかわった企業再生の実例をケーススタディーにして、生徒の皆さんに議論してもらいます。ビジネススクールの授業に近いものです。
最初はみんな恥ずかしがってあまり発言しませんが、途中からだんだん白熱してきて、最後のほうはかなり議論が盛り上がります。毎年やっていますが、年々、議論のレベルが上がっているように感じ、こちらも楽しみです。
振り返ると、私にとってSFCでの最大の収穫は、6年間という時間を使ってその後の人生やキャリアの武器となる実績を作れたことでした。
大学新卒で入ったゴールドマンにしても、その後に転職したベインキャピタルにしても、現在の会社にしても、世界規模で事業展開する外資系企業には、若い優秀な人材が世界中から集まってきます。みなそれなりの大学を出ているので、学校の成績がずば抜けて優秀なら別ですが、そうでない限り大学名だけでは自分を差別化できません。
その差別化のカギとなるのが、学業以外に何か自分で目標を立て、それを達成した実績を持っていることだと私は思います。私の場合は結果的に、サッカーの台湾代表になったことでした。
私以外にも、SFCの環境を生かして自分の武器を獲得した人は大勢います。実績作りは自分が頑張れば別にどんな学校でもできますが、受験勉強のない中高一貫付属校は、その分チャンスが大きい。それがまさにSFCの強みだと思います。
(ライター 猪瀬聖)