勉強ダメでもベストセラー次々 東海同級生3人の輪
山本周嗣・文響社社長が語る(下)
また、初めて会うような人でも、同窓生というだけで、非常に親近感がわきます。つい先日も、仲の良い同級生を介して、弁護士になった同級生と知り合い、食事をしました。在学中は言葉を交わした記憶はありませんが、会った瞬間、互いに「そう言えばこんなやつ、いたなあ」という感じですぐに打ち解け、「何かあったら遠慮なく相談してよ」と言って分かれました。
出版不況といわれるなか、文響社の業績は右肩上がりが続く。
最近しみじみ思うのは、「人生に奇跡は起こらない」ということです。ヒット作も奇跡では生まれません。私は、作品づくりにあたっては、まず、徹底的に調査をします。世の中の人は何を求めているのか。どんなものをつくれば、より多くの人に喜んでもらえるのか。そうした努力があって初めて結果を残す権利を与えられるのだと思います。
東海時代を振り返ってみれば、私は勉強するという努力を怠ったために、成績が急降下しました。勉強しなくても試験は何とかなるのではないかと自分に期待したこともありましたが、それは甘い考えで、世の中当たり前のことしか起きません。そういった意味ではきわめて完璧にできていると思います。経営者となって、人生に奇跡は起こらないと思うようになったのも、遡れば、東海時代のほろ苦い経験が教訓として私の心の中に生きているからかもしれません。
また、私は文響社をつくる際に、「人間の成長や教育にエンターテインメントを融合することによって、お客様が食べやすい作品をつくる」という方針を掲げました。この軸は今も全くブレていません。そこが私たちの強みであり存在価値だと思うからです。
どうすれば自分の存在価値を見出せるかという考え方も、マンモス校の東海で6年間過ごし、いろいろな人間との出会いや日々の様々な経験を通じて、自ずと身に付いたことではないかと思っています。いろいろな経験をさせてくれ、人との縁もつくってくれた東海は、本当にありがたい存在ですね。
(ライター 猪瀬聖)