不得意な仕事はイヤ! でもヤル気は示す3つの英語
デイビッド・セイン「影の英語」(47)得意ではない

ひとつの言葉は様々な顔を持っています。日本人の言葉が意図していない意味合いで伝わることもあります。日本人向けの英語教育で豊富な経験を持つデイビッド・セインさんが、日本人が使いがちな言葉から「影にある意味」を紹介します。今回は、不得意なことをやりたくないと伝える場面です。
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自分の得意・不得意は自分が一番知っています。得意なことはやりたいけれど、不得意なことは避けて通りたい。そうできればよいのですが、社会に出ればそうもいきません。Could you give the presentation to the Board of Directors? 「取締役会議でプレゼンをしてくれませんか?」それだけは避けたい。何と言えばこの苦行を避けられるのでしょうか。それ以前に避けることはできるのでしょうか。
正しい訳:プレゼンはできません。
影の意味:プレゼンはしたくありません。
綱渡りをしてくれ、と頼まれているわけではありません。頼んだ人は、社会人ならきちんとした調査、準備、練習をすれば誰にでもプレゼンは可能であると考えているはずです。その場面でcan't と言うと「したくない」と同じ意味にしかとられないでしょう。
正しい訳:プレゼンはあまり得意ではないんです。
影の意味:私は何もできないダメ人間なんです。
努力をするのか、しないのか……結局そこに尽きます。あまり得意ではなければ努力しましょう。人はそう考えるはずです。特に not any good は全否定を表す言葉です。このような場合には適当なフレーズとは思えません。
正しい訳:申し訳ないですが、遠慮させていただきます。
影の意味:申し訳ないですが、プレゼンはお断りです。
declineは「断り」の表現ですが、丁寧なように聞こえていて実は上から目線のニュアンスになります。
これなら「影の意味」はない!
プレゼンをするのは得意ではないのですが、全力を尽くします。
「基本的に断らない」と決めている人の答えです。「自信がない」ことはひと言添えてよいでしょう。「でも全力を尽くします」という態度こそが大切です。このような姿勢は好感を与えます。
もし手を貸してただければ、何とか準備をして一生懸命やります。
どんなに頑張ろうとしても厳しい現実もあります。そのような場合は率直に助力をお願いしてみましょう。If you could help me…「もし手を貸していただけるのであれば」は「仮定法」で、押しつけがましくない依頼とすることができます。
協力をしたいのはやまやまですが、他の方に頼んだ方がよいかもしれません。
得意・不得意の問題だけではなく、あなたが現在抱えている仕事の多寡もあります。断るしかない、どうしても断らざるをえない場合はまず「本当は協力したい」気持ちを相手に伝えましょう。そのうえで it might be best to… で自分の考えを述べます。これは控えめな表現になります。
あなたが知らない本当の使い方――give
giveと言えばgive and take が思い浮かびます。これは「持ちつ持たれつ」の意味。ビジネス成功則のひとつとも考えられています。giveはhave, take, get などと並んで基本動詞のひとつです。持つ意味は非常に幅広くこの動詞を押さえておくだけでも、かなり語彙の幅が広がることは間違いありません。
・I knew he was lying, so I gave him a mouthful. 彼が嘘をついていたことは分かっていた。だから悪態をついてやったよ。
*give…a mouthful:悪態をつく、罵る、非難する
・I've never done it before, but I'll give it a whirl. それは以前にやったことがありませんが、思い切ってやってみます。
*whirlは「渦」や「くるくる回転するもの」を表し、そこから「無我夢中」の意味になります。
give it a whirl:(特に今までやったことのないことを)思い切ってやってみる
whirlwindなら「つむじ風」のこと
・If I can't show why my plan is the best, my boss won't give me the nod. 私の計画がベストであると示せなかったら、ボスは承認してくれないでしょう。
*nodは「うなづく」こと。そこから「首を縦に振る」「承認、同意」を表します。
give the nod:承認する、同意する
・It'll take about three months to finish this job, give or take a few days. この仕事を終了させるには、数日のずれがあるにせよ約3カ月でしょう。
*give or take:数の増減(出入り)はあるにせよ、多少の誤差があるにせよ、おおよそ
give and takeとの違いに着目しましょう。
・George is new here. Why don't you give him a leg up? ジョージはここでは新人だ。 彼を手伝ってあげたらどうだろうか?
* give…a leg up:~を手伝う、困難を乗り越えられるように手伝う
・I'd give my right arm to get a chance to work in Italy. イタリアで働くチャンスのためなら、喜んで何でもします。
*give one's right arm:どんなことでもする、いかなる対価も支払う
・We'll have to give in to George's plan. He's the boss. 我々はジョージの案に従うしかないだろう。彼がボスなんだから。
*give in to:~に従う、屈服する、降参する
・Give me a break! This is not my fault! 勘弁してよ!僕のせいじゃないよ!
*Give me a break!:勘弁してよ。いい加減にしてよ。
・Rumors like this give rise to distrust. そういう噂は不信を起こす元になります。
*give rise to:~を起こす、~の元になります
・Despite the bad economic conditions, ABC refused to give ground to the merger plan. 経済の悪化にもかかわらず、ABC社は合併計画に屈服しませんでした。
*give ground:譲歩する、譲る、屈服する
・This plant gives off a refreshing smell. この植物は気持のよい匂いを放っています。
*give off: 放つ、放出する
・After several days of hard work, his energy gave out. 数日間の激務後、彼のエネルギーは尽きてしまいました。
大きなプロジェクトを任されました。I don't know if I can do a good job, but I can try. 「うまくできるかどうか分かりませんが、とにかくやってみます」。日本人がつい言ってしまいそうな言葉です。自分の中では自信があってもつい謙遜してしまうのは日本人の美徳ではありますが、外国人上司にしてみるとやはり不安に感じることもあるかもしれません。
自信過剰に見えていや……という気持ちがあるかもしれませんが、ここは気持を前面に押し出してみましょう。I'll give it my all. 「私のすべてを注ぎます」すなわち「全力で頑張ります」の意味。I'll put in all my effort. も同じく「全力を尽くします」の意味になります。
ちょっと自信過剰に聞こえる?と思っても You can count on me. 「あてにしてください」 I won't let you down.「がっかりはさせません」 I'll work hard to meet your expectations.「ご期待に沿うために一生懸命頑張ります」なども相手に安心感を与える言葉になります。
Try and try again!
: Dセイン
※デイビッド・セインの「ビジネス英語・今日の一場面」は木曜更新です。次回は10月12日の予定です。
米国出身、20数年前に来日。 翻訳、通訳、執筆、英語学校経営など活動は多岐にわたる。企業や学校の人気セミナー講師。英語関連の出版物の企画・編集を手掛けるAtoZ(http://www.atozenglish.jp)・AtoZ 英語学校代表。