「ガキ大将」新浪剛史氏を飛躍させた翠嵐バスケ
サントリーホールディングス(HD)社長の新浪剛史氏

神奈川県立の横浜翠嵐高校
そうしたらね、自分より背の高い選手よりも高いところを跳べるようになるんですよ。僕のほうが相模工大の大きな連中より圧倒的に上に跳んだ。跳躍力がつくようになると、相手のシュートをたたき落とせるようになる。全般的には大きくないチームだったけど、跳ぶ力はすごかった。基礎を徹底的にやること、チームの特徴にあった組織づくりは、翠嵐のバスケ部で学んだんです。
ディフェンス力で強豪校に勝利した。
高校3年の関東大会で、僕らは以前の準優勝校にあたってしまったんです。勝てないよなあ、と思っていた。相手も「聞いたことのない学校だなあ」となめてかかっていた。ところが、僕らは2ケタ以上の差をつけて勝ったんです。相手は負けたとき、なんでこんな学校に負けたんだ、と怒っていました。
僕らは、強みにしていたディフェンスで相手を追い込んだんです。バスケでは、5回ファウルを取ると退場になります。ディフェンスがうまければ、真正面から攻めてきた相手のファウルを誘うことができる。相手のチームにスター選手がいたんだけど、2人ともそれで追い出して勝つことができた。
相手はそんなディフェンスが強いチームとやったことがなかったんじゃないかな。そもそも、スタープレーヤーはみんなオフェンス、攻撃力が強いからね。僕らは完全に差別化されていた。グラビアに出るようなスター選手だったんだけど、退場になってコートからいなくなった。そうしたら楽勝です。後半は、(準レギュラーの)2年生が試合に出ていたくらいでした。完全に戦略勝ちです。
そのあとも勝てたんだけど、途中で強豪の明大中野に当たってしまった。これはもう、歯が立たなかった。背の高さや攻撃力だけでなく、僕らが強みにしていた跳躍力も防御力も、何もかも上なんです。
試合前に練習を見ていて、「うーん、このチームと戦った、というのはいい記念になるなあ」と思っていた。平田っていう日本一有名な選手がいたんです。彼と試合できるなんていいなあと思った。点数差は40点くらいあったんじゃないかな(笑)。
慶応大学卒業後、三菱商事に入社。91年に米ハーバード大の経営学修士号(MBA)を取得。43歳で三菱商事からローソン社長に転じ、11期連続で営業増益を達成。14年、サントリーホールディングス社長に就任。58歳。
(松本千恵)