トヨタ社長のもう一つの顔 「モリゾウ」に変わる時

GRの記者会見に登場したトヨタ自動車の豊田章男社長(右)
トヨタ自動車の豊田章男社長が、東京モーターショー(25日から報道機関向けに公開)の顔になる。日本自動車工業会長で日産自動車の西川広人社長が、同社の無資格検査問題で東京モーターショーの会長役を務められなくなったため。会長代行として章男社長が立つわけだ。トヨタ創業家出身のプリンスは、すでに業界の顔ともいえる存在だが、もう一つ、自らハンドルを操って車の限界に挑戦するレーサーとしての顔も持っている。
「びびった」。テストコースでクルマを運転する章男社長の隣に座ったあるトヨタ幹部はこう振り返る。時速300キロで走り抜け、猛スピードでカーブに突入。「一瞬の油断で大事故につながる。この人、本当に社長なのか」。ぞっとしたという。このとき、ハンドルを握っているのは章男社長ではなく、「モリゾウ」だ。
章男社長には、モリゾウと名乗るレーシングドライバーの顔がある。ドイツの過酷なニュルブルクリンク24時間レースのほか、様々な大会に挑戦している。通常、自動車メーカーの社長が自らレースに参加するなどリスク管理上あり得ない。しかも章男社長はサラリーマン社長ではない。なぜ章男社長はモリゾウにこだわるのか。
このユニークな名前は、父親でトヨタ名誉会長の豊田章一郎氏が大会運営のトップだった2005年の愛知万博の公式キャラクター「モリゾー」をもじったといわれる。とにかく章男社長はモリゾウと呼ばれるのが好きだ。
「マツダさんと提携したけど、実は経営陣と最初に会ったのは自動車のテストコース。そこで今日はモリゾウさんと呼んでいいですか、問われた。最近、モリゾウとよく言われる」。9月下旬のトヨタの新たなスポーツカーシリーズ「GR」の記者会見に登場した章男社長。提携したマツダとのエピソードをこう話す。