「なぜ中国人は財布を持たないのか」 激変中国の今
中島恵著

国内で1日に刊行される新刊書籍は約300冊にのぼる。書籍の洪水の中で、「読む価値がある本」は何か。書籍づくりの第一線に立つ日本経済新聞出版社の若手編集者が、同世代の20代リーダーに今読んでほしい自社刊行本の「イチオシ」を紹介するコラム「若手リーダーに贈る教科書」。今回の書籍は「なぜ中国人は財布を持たないのか」。多くの普通の市民への取材をもとに、私たちの想像を超えるスピードで変化する中国の社会と人の姿を描いている。

中島恵氏
著者の中島恵さんは1967年生まれで、北京大学や香港中文大学に留学。新聞記者を経てフリージャーナリストとなり、中国や香港、アジア各国のビジネスや社会事情などを取材・執筆しています。2012年に出版した「中国人エリートは日本人をこう見る」(日本経済新聞出版社)が3万部を超えるヒットとなったほか、「中国人エリートは日本をめざす」(中央公論新社)、「『爆買い』後、彼らはどこに向かうのか?」(プレジデント社)など、中国関連の著書が好評です。
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「キャッシュレス」で先行、中国の事情
日本でも電子マネーが普及し、コンビニエンスストアのレジで「シャリーン」という決済の音を聞くのも当たり前になってきました。その気になれば、スマートフォン(スマホ)一つで買い物も食事もでき、電車やタクシーにも乗れる時代です。ただ、全体としては、なお決済の主流は現金です。本書は冒頭で、銀座の老舗和菓子店で「スマホ決済」を断られたとおぼしい中国人客の会話を紹介します。「日本は、こういうところはけっこう遅れているんだよねぇ」
(プロローグ どうして日本人はまだ現金を使っているの? 4ページ)