インドの「天才」がほしい メルカリの採用作戦
インドの就活、固有のルール
12月に大学で行う採用面接は、大学からの信用度が高い企業ほど早いタイミングで実施できる。しかも、早く面接を受けた学生は、内定と同時に就職活動を終えてしまう。つまり、早い面接日程を確保できない企業は、採用もおぼつかないというわけだ。
メルカリのハッカソンも、認知度を上げて面接日を1日でも早くするための試みだった。その狙いは当たり、ハッカソンに成功した学生たちはSNS(交流サイト)で会場の様子を紹介したり、メルカリが配ったTシャツを着て学内を歩いたりしたという。
「おかげで就職課からしっかり認知されたのだと思います。今年は、インド全国にあるIIT各校のうち、1校で初日に面接する権利を得られました」と、石黒卓弥HRグループマネジャーは話す。さらにハッカソンを終えた後、石黒氏のもとには、(ビジネス用SNSの)リンクトインを通じてインドの大学生から問い合わせが集まるようになった。採用そのものは就職課のルート以外ではできないが、学生の積極的な動きに感銘を受けているという。

メルカリ創業者の山田進太郎会長兼CEO。外国人の採用にも熱心だ
初めてのインドでの採用活動だったが、IITの5校から30人を超える学生を採用するのに成功した。来年以降にも、手応えを感じる結果だ。ビシャール氏によると、「IITの学生は将来を見すえて最初の就職先を探している。ポイントは、大きな課題に取り組めて、人が少ない会社。そこにいれば、多くのことを学べるから」と話す。日本で数少ないユニコーン(会社の価値が1000億円を超える非上場企業)とされるメルカリは、その条件にぴったり当てはまるのだろう。
初任給は一律で、年をとるにつれて昇給していく――。多くの日本企業で、なお当たり前と考えられている給与制度も、若くて優秀な技術者を採用しようと思えば、壁になる。メルカリは日本人の新卒でも、人によって給与が異なる。「能力が高ければ、新卒で月収が50万円というオファーもある」という。人事の担当者にとっては、非常に手間がかかるが、「相手の能力をきちんと評価すれば、誰もが納得してくれる」(石黒氏)という。
外国人採用、生活まるごと受け止める覚悟が必要
日本企業にひかれ、海外から優秀な人材が入社してくれても、すぐにやめてしまっては意味がない。長く働いてもらえるよう、田面木氏が最も心をくだいているのが、食事をはじめとする生活のきめ細かいサポートだ。このため、異なる文化の理解を深める研修を行ったり、外国人社員向けの日本語教育などを運営したりする「グローバルオペレーションズチーム(GOT)」を設けた。