第二新卒が熱い 元ロッテ田中投手、三井物産入社へ
「なんて懐の深い会社だ」。田中さんは心を動かされた。筆記試験は新卒時にパスしたとの理由で免除されたが、面接は通常通り受け、再び内定を獲得。2018年4月に新卒扱いで入社する予定だ。田中さんは、「3年間、結果の求められる世界にいることで磨かれたプロ意識と責任感を商社の世界でも生かせる」と意気込む。

2017年10月に開いた三井物産の内定式
もともと三井物産は「人の三井」と称されるように社員の人間力、個性を尊重する社風だ。しかもグローバル化が進み、「不確実性のある世界で勝ち抜くには、さらなる多様性のある人材が必要だ」(古川智章・人材開発室長)という危機感を持つ。そこで近年は通常の6月の選考に加え、2017年8月には2泊3日の合宿方式による選考にも乗りだし、様々なバックグラウンドを持つ逸材の掘り出しに力を入れている。
田中さんの「再内定」もその流れの一つだ。商社は事業をつくるのが仕事。新しいプロジェクトの立ち上げは並大抵の努力ではできない。京大工学部出身の田中さんは貴重な理系人材。体力もある。
三井物産は田中さんのプロ野球経験で培った「折れない心や、やりきる力に期待」(古川室長)し、再び内定を出した。今後は「第二新卒の採用に力を入れていく」という。
三井物産のように新卒採用を重視してきた名門企業が今、第二新卒に注目している。博報堂が16年度に中途採用した90人のうち、およそ半分が社会人経験5年目までの第二新卒だった。同社は新卒を年100人程度採用しているが、「年に一度の新卒採用だけでは、優秀な人材を見極めきれない」(秋沢靖・人事部長)という。
中小・VBでは主戦力に
少子化で大卒の民間企業就職希望者数はここ数年、42万人前後で頭打ちになっている。一方で業績の回復やグローバル化などを背景に、求人倍率は1.78倍と企業の新卒需要は高まっている。「マイナビ企業新卒内定状況調査」によると、18年卒の採用充足率は前年比4.7ポイント減の83%。特に非上場企業は77.8%で上場企業と比べても17.5ポイントも低い。中堅以下の企業は新卒を十分に確保できていないのが実情だ。
「もう新卒を採用しません」――。こう宣言するのは、人材サービスなどを手がけるSEプラス(東京・千代田)の村田斉社長。「本当は新卒を採りたいが、うちのような中小企業は知名度がなく、いい学生がとれない」と打ち明ける。