「怒りが込み上げ」 桜蔭の授業で人権問題に目覚める
土井香苗・ヒューマン・ライツ・ウォッチ日本代表が語る(下)

土井香苗・HRW日本代表
私立女子校の桜蔭中学・高校(東京・文京)出身で、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)日本代表の土井香苗氏(42)。桜蔭時代は、桜蔭生の宿命ともいうべき東京大学合格を目指して黙々と受験勉強に励む一方、二つの出来事が、後に世界の人権問題に取り組む大きなきっかけとなったと話す。
中3の夏休みに英国でホームステイした。
夏休み前に、父が会社の同僚から、子供を英国にホームステイさせているという話を聞いてきて、私に「香苗も行きたいか」と尋ねました。なんとなく面白そうだったので、行くことにしました。
理由は不明ですが、小さいころから海外のことに興味がありました。新聞は国際面を真っ先に開きましたし、中学時代は、海外に関するノンフィクションもよく読みました。だから、ホームステイにも関心を持ったのだと思います。
ホームステイ先はエジンバラ。期間は約2週間。ホストファミリーの家には、私以外に、私と同じくらいの年のドイツ人とベルギー人とスペイン人がいました。
海外は、家族旅行でハワイに行ったくらい。親元を離れて2週間も外国に滞在するのは初めての経験でした。外国人と英語でコミュニケーションするのも初体験。周りが全員ヨーロッパ人の中で、1人だけアジア人というマイノリティー感を味わうのも初めて。とにかく初めてのことばかりで、世界は広いなあと思いました。
同時に、自分の英語力のなさを痛感し、非常に悔しい思いもしました。実は小学生のころから暗記科目が苦手で、英語もどちらかといえば嫌いなほう。でも、ホームステイをして初めて、英語を勉強する意味がわかりました。それからは英語の勉強が楽しくなり、成績もどんどんよくなりました。今の仕事も英語が不可欠ですが、もしあの時ホームステイしていなかったら、きっと英語の苦手な普通の日本人になっていたんだろうなあと考えると、ホームステイの経験は私の人生にとって非常に大きな出来事でした。