「怒りが込み上げ」 桜蔭の授業で人権問題に目覚める
土井香苗・ヒューマン・ライツ・ウォッチ日本代表が語る(下)
親には反発したものの、司法試験の勉強は相当進んでいて、ここで止めるのももったいないと思い受験したら、1回で合格しました。
司法試験合格後、大学4年の1年間、念願のボランティア活動をすることができました。仕事は、独立間もないアフリカのエリトリアで、法律をつくる手伝い。法務大臣に直接お願いしたら、「いいよ」と言って受け入れてくれました。
その間、難民キャンプも訪れました。しかし、難民キャンプでの仕事は、自分の想像とかなり開きがありました。現実を見て、自分は難民に何かを与える仕事よりも、弁護士として難民の立場に立って支援するほうが向いているという結論に達し、その時初めて、弁護士になろうと決めました。
帰国後、弁護士事務所で5年ほど働き、国際人権法を学ぶためニューヨーク大学ロースクールに留学。そのまま、HRW本部でフェローとして働き始め、2009年、HRW日本事務所を立ち上げた。
HRWは人権にかかわる問題は、難民から戦争から女性や子供にいたるまで何でもやりますが、東京事務所がいま特に力を入れているのは、性的マイノリティーなどのLGBTの問題と、里親推進など子供の社会的養護の問題。また、北朝鮮やミャンマーのロヒンギャの問題も、日本政府に行動を起こすよう働きかけています。
桜蔭時代のホームステイの経験、国語の授業での犬養さんの本との出会いがなかったら、私の人生はかなり違う人生になっていたと思います。そして、日々なんとなく過ごしていた私でも、東大に入れ、弁護士になることができたのは、桜蔭という環境のおかげだと思っています。
現在、国会議員や成功した起業家などと会う機会の多い仕事をしていますが、本当に女性が少ない。この閉塞状況を破る使命を負うのが桜蔭だと思っています。私自身、殻を破れたのは大学生になって家出をしてから。自分自身の高校時代への自戒も込めて言いますが、桜蔭生はもっと自分のやりたいことにチャレンジすることに野心的になってもいいのではないかと思います。よき社会人になることはもちろん大切ですが、グローバル人材が求められる中、型破りな桜蔭生がたくさん必要な気がしています。
(ライター 猪瀬聖)