練習1時間で花園へ 新日鉄住金社長を育てたラグビー
新日鉄住金の進藤孝生社長(上)

新日鉄住金の進藤孝生社長
新日鉄住金の進藤孝生社長は、秋田高校時代に2度、全国高校ラグビー大会(通称・花園)に出場し、一橋大学のラグビー部では主将を務めた筋金入りのラガーマンだ。当時の秋田高校ラグビー部は部員が20人足らずで、ケガ人が出れば試合ができなくなる恐れもあるチームだったという。秋田県随一の進学校は、なぜ強豪校を破り、全国ベスト4まで進出できたのか。「文武両道」を可能にした練習法やチームワークへの思いを聞いた。
中学時代は野球部。ラグビー部の門をたたいたのは、スポーツと学業を両立できると考えたからだ。
僕がラグビーに出合ったのは、秋田高校に入学してすぐです。中学時代は野球部でした。進学校の秋田高校でも、野球部は朝から晩、午後10時、11時くらいまで練習していました。一方、「ラグビー部は練習が1時間」といわれました。正直なところ、それも理由の一つです。ラグビー部の監督だった児玉市郎先生は、長時間の練習漬けでは「部員が増えないから、練習は1時間だけ」と決めていた。これならいいだろうと思ったんです。
スポーツと学業の両立を意識したのは、入学式の式辞でした。校長先生が「『汝(なんじ)何のためにそこにありや』という問いに、いつどこにいても完璧に答えられるようになりなさい」と話されたんです。自分の存在意義をいつも考えろということです。この問いに答えるには「常に心身の鍛錬をしておきなさい」と言われました。この言葉に非常に触発されました。
英語の授業では、慶応義塾大学文学部教授だった池田潔先生の著書『自由と規律』に出合いました。英国のパブリック・スクールの教育方針が書いてあり、そのなかに「貴族を含む上流階級の子弟に個人の利害、肉体の苦痛を犠牲にして己の属するチームの利益に奉仕する精神を教える」という趣旨の言葉がありました。