練習1時間で花園へ 新日鉄住金社長を育てたラグビー
新日鉄住金の進藤孝生社長(上)
僕らは17人しかいないから、代わりはいません。1人やめれば試合ができなくなっちゃう。僕や僕の仲間たちがやめなかったのは、関係が親密だったこともあるし、責任感だったと思います。やっぱり、最後は人間関係だし、「チームのために自分のポジションを守る」という姿勢を大事にしたい。それは仕事でも変わらないです。
3年生のときにも花園に出場。受験を目前に控えた正月までラグビー漬けの日々を送った。

進藤氏は「学業とスポーツの両立に懸命だった」と振り返る
授業が終わって、午後4時から全体練習を1時間やり、そのあとで個人練習を30分やって、午後5時半ごろに部活が終わります。午後6時半には家で夕食をとる。そのあと午前1時くらいまで勉強していました。両立という意味では、一生懸命だったと思います。
生徒会長もしていたので、3年の11月まではいろいろな行事や準備なども大変で、練習に遅刻することもありました。それが終わると、ラグビーと勉強の日々でした。3年のときにも花園に出場し、正月までラグビーの試合でした。秋田に戻って落ち着いて勉強したのは1月10日を過ぎてからでしたね。
学業とスポーツの両立というのは、秋田高校全体の雰囲気でした。僕らラグビー部だけでなく、野球部や剣道部も全国大会に進むなど、かなり活躍していたんです。大学の進学実績という点では、今のほうがずっといいけどね(笑)。
ラグビーを貫く哲学「リーダーシップとフォロワーシップ」は、仕事でのチームワークにつながる。
僕はラグビーに様々なことを学びました。なかでも、大切に思っているのが「リーダーシップとフォロワーシップ」です。いつも若い人に言うんですが、世の中に一人でできる仕事はない。個人事業主だろうが、自由業だろうが、なんらかの組織や集団に属して仕事をしていく、そういうものなんです。大学の後輩で「弁護士になるからあまり関係がないんです」という人がいたんだけど、そんなことないですよ。弁護士だって必ずチームを作ってやっていくんです。
チームでやっていく上では、やっぱりリーダーも、フォロワーも必要です。よきフォロワーとしての経験を積んだ人でないと、優れたリーダーにはなれない。その意味で、リーダーシップとフォロワーシップは表裏一体ですし、それがチームワークを作り出すと強く信じています。ラグビーはそういう経験ができるスポーツなんです。
1973年一橋大経卒、新日本製鉄(現新日鉄住金)入社。人事、総務、経営企画に携わり、ハーバード大学大学院で経営学修士(MBA)を取得。12年に新日鉄住金副社長となり、14年から現職。秋田県出身。68歳。
(松本千恵)