ラグビーの現場主義、震災でも生きた 新日鉄住金社長
新日鉄住金の進藤孝生社長(下)

進藤氏は「会社の後を託すリーダーは、ラグビーのリーダーと同じように選ぶ」と話す
2012年には、住友金属と新日鉄が合併しました。この2社も、理屈っぽさは共通でした。住金出身の人は、「新日鉄の人は理屈っぽい」と思っていたでしょうが、僕は意外と彼らも理屈っぽいなと思いました。今では文化や価値観の違いで生まれるような、いさかいはないですね。
必ず訪れるリーダーのバトンリレー。後継者には「優秀なプレーヤー」より「チームワークを大事にする人」を選ぶ。
ラグビーでいえば、主将はプレーがうまくて、チームに貢献できる度合いも高く、人格も立派で、チームワークを維持することに意欲を持っている人、これが理想です。しかし、そうではない場合もある。そのとき、僕はチームワークを維持する意欲の強さを重視します。
ラグビーには、「オナー・イズ・イコール」という言葉があるんです。味方のトライが決まったら、決めた人だけが栄誉を受けるのではない。パスをした人、タックルをした人、スクラムを支えた人、みんなが受ける栄誉は等しい、という考え方です。仮に技量が少し劣っても、縁の下の力持ちというか、目立たないけれどきちんと貢献しているか、その意欲があるか。ラグビーのリーダーはそれで選ばれると思います。
私もそうします。後を託すリーダーには、チームワークを大事にする人を選びます。どれだけ一人うまくても、勝てるスポーツじゃないからです。ビジネスでも同じです。世の中に一人でやる仕事はほとんどないのだから。僕はいろんな会社の社長や組織の長と話をしてきました。偏見かもしれませんが、どの組織もプレーヤーとしての能力が優れた人よりも、チームを維持することにたけた人が選ばれているな、と思いますね。
1973年一橋大経卒、新日本製鉄(現新日鉄住金)入社。人事、総務、経営企画に携わり、ハーバード大学大学院で経営学修士(MBA)を取得。12年に新日鉄住金副社長となり、14年から現職。秋田県出身。68歳。
(松本千恵)