経営者デビューのチャンスは、人生に4度やって来る!
経営者JP社長 井上和幸
とはいえ、私はこの15年ほど、エグゼクティブ人材市場を追いかけてきて、若い世代が社長に就く傾向と事実は確実に増えていることを実感しています。
起業型経営者に関しては、若い世代のアントレプレナーが次々と生まれ、最近は高校生どころか、中学生起業家も現れて話題になっています。起業はまだまだ増えていくでしょうし、その会社の後任社長の就任年齢も若くなるケースも増えるでしょう。
60~70代から経営者デビューするイマドキのシニア
もちろん、今後すべての経営陣が若くなっていく、また、若い経営者でなければダメなのかといえば、それは違います。「人生100年時代」で現役として就労する期間が長くなるにつれて、やりがいや自己実現、経済的理由などから、経験と年齢を積んだ上で会社を創業する、あるいは、後継社長として着任するケースもまた増えていく予兆が見えています。

エリーパワー社長の吉田博一氏
例えば、高齢になってからの創業では、旧住友銀行(現三井住友銀行)副頭取の吉田博一さんのチャレンジがよく知られています。吉田さんは、三井住友銀リース(現三井住友ファイナンス&リース)の社長、会長を経て、2006年、69歳のときに環境問題への情熱から大型リチウムイオン電池の会社、エリーパワーを設立しました。わずか4人で始めた会社でしたが、古巣の銀行を頼ることなく、同社を330人超(17年9月1日時点)の規模にまで育て上げ、80歳になられた今もますます意気軒高のご様子です。本当に魅力的で、パワフルな方だと思います。(関連記事「『2度目の起業も』 79歳の元住銀副頭取、夢に挑む 」参照)
また、この原稿を書いている少し前のことですが、私はある40代の前半のエグゼクティブの方の転職をお手伝いしました。お話を聞いてみると、今回転職を思い立ったきっかけは、お父さまが退職された後に70歳で自ら開業されたことだというのです。高齢のお父上の行動に刺激を受けて、働き盛りのシニア世代の息子さんが「大きくチャレンジしたい」と転職を思い立つ。この構図はとても面白いし、現代的だと思いました。
人生100年時代と経営者になる世代の広がり
私がここで何を言いたいかというと、「今、人生において経営者になるチャンスとタイミングの世代がとても広がっていますよ」ということです。
経営者になるというと、とかく「若返り」に注目が集まりがちです。冒頭にご紹介したように、大手のトップ人事が大きく若返りとなったとか、20代起業家、最年少上場社長、あるいは高校生、中学生での起業――これからの時代、60歳以上の社長は老害だから辞めよ、40歳代以下にバトンを渡す時代だ、などなど。
もちろん団塊の世代、あるいはその後のバブル世代、そしてそろそろ団塊ジュニア世代すらもが40歳代に入り、企業組織においての「重たい世代」、下の世代のキャップになってしまっている部分もあり、大手企業を中心にそれが若手~中堅世代のキャリアの足かせになっているケースもあります。
しかし一方で、先にご紹介したようなアクティブシニア世代が、価値ある事業を創出したり、新たなチャレンジをしたりすることで活力を生むケースも増えてきています。要するに、10代、20代デビューもあれば、30代も40代も、そして、80代デビューもあり得る。そんな時代になっています。