「ぶつかりながら」 新浪流の米ウイスキー会社統合法
サントリーホールディングスの新浪剛史社長
「結構ぶつかりましたよ。相手は創業から200年以上続くバーボンの老舗メーカーです。買収当初は、当社よりも世界で広く蒸留酒を売っていたのですのから。『我々の方が世界を知っているのだから、マーケティングに口を挟んでくれるな』ということです」

「佐治会長から常にアドバイスを受ける」という新浪社長
「サントリーの源流であり伝統ある国内の蒸留酒会社をビームサントリーの傘下に移したが、彼らとは当初、国産ウイスキー『山崎』や『響』の販売の考え方などに大きな隔たりがあった。当社からしてみれば子会社なのになぜ従わないのかとなるわけです。両社とも譲れない部分がありました。相当ぎくしゃくして、私は真っ青になりました」
会長から開高健の言葉
――佐治会長にはどんな指南を受けましたか。
「佐治の部屋には今でも1週間に1回行って1時間から1時間半は話しますが、当初は『悠々として急げ』と常に言われました。作家、開高健さんが生前によく使った言葉です。私としては相当のプレミアムを払い買収した会社で成果をあげなければと、すごく焦るわけです。ビームが日本の文化を学べ、日本にもっと来いと頭にきていました。そんな私に佐治は『急いでもらいたい。でも悠々ともしてもらいたい』と。これはもはや禅問答ですよね。でも、これは佐治から『おまえ焦りすぎると、おかしくなるぞ』との示唆でした。要は、『胸襟を開け』ということでした」
「自分の部屋に入って考えました。もう少し、両社の統合では、もっと基本的なところをしっかりやるべきだ。そうした考えのもと、15年から始めた『サントリー大学』と呼ぶ人材の育成プログラムを強化し、海外からはビームサントリーの社員を招き創業精神を学んでもらっています」