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 「それぞれに必ず良い部分、悪い部分があるのだから、良い部分で補い合うという空気が醸成されていきます。きっかけは生産部門です。大阪にある山崎蒸留所を中心とした生産部門の社員がバーボンの勉強をしようとなり、(ビームサントリーの)米ケンタッキー州の蒸留所と相互に交流するようになりました。交流を経て"サントリーはものづくりの会社、マーケティング会社にあらず"ということをビームサントリーに明確に示しました」

共同開発のジンは大ヒット

――ビームとの統合は何合目まで来ましたか。

「6合目くらいまでは来たかな。いよいよ攻めに転じます。攻めの始まりを象徴するのがビームサントリーと海外展開を見据えて初めて共同開発した高級ジン『ROKU(ロク)』です。桜の花や煎茶など和の素材を使っており、17年に国内外で発売しました。同年に世界で予想を上回る2万ケースを売る、大ヒットとなりました」

米ビーム買収を発表したサントリーホールディングスの佐治信忠社長(右、現会長)

米ビーム買収を発表したサントリーホールディングスの佐治信忠社長(右、現会長)

「本来であれば、国産ウイスキーを海外のビームの販路を通じて売り込んでいければ良かったのですが、急速な需要拡大に生産が追い付かなかった。攻めができて頂上にたどり着けると思っています」

「ビームサントリーの従業員を対象とした意識調査では、直近では社員の88%が『サントリーで働くことへの誇りを感じている』と答えています。『ビームサントリーがサントリーになってきた』という実感がありますね。それは買収によりビームを乗っ取ったということではありません。精神的な、ものの価値観を共有できるようになってきたと考えているからです」

――価値観の共有というのは具体的にどのように表れていますか。

「創業者である鳥井信治郎が信念としていた『利益三分主義』があります。事業で得た利益は『事業への再投資』『得意先・取引先へのサービス』にとどまらず『社会への貢献』にも役立てるとの考え方です。この考え方に基づき、国内ではお酒など製品づくりに必要な水源確保につながる森林保全活動などに取り組んでいます。ビームサントリーでも、彼らも家族に誇れる試みだと張り切り、米国のウイスキー蒸留所の周りで森林保全を自主的に始めているのです」

「彼らの多くは、挑戦を至上の価値とする『やってみなはれ』というサントリーの創業精神の根幹を十分理解してくれています。社内では、新たな発想による挑戦的な活動を実践するチームを表彰する制度がありますが、応募件数で最も多いのはもはや日本の会社ではありません。国内外のグループ会社でみると、16年以降はビームサントリーが最多になっています。挑戦しようとする機運が大きく表れているでしょう」

新浪剛史
 1981年慶大経卒、三菱商事に入社。米ハーバード大で経営学修士号(MBA)を取得。ローソン社長、会長を経て、2014年にサントリーホールディングス社長に就任。

(聞き手は新沼大)

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