中学1年で相対性理論を考える 海城生は起業家向き
平尾丈・じげん社長が語る(下)
入試問題もそうでしたが、私が思うに、海城は生徒一人ひとりに考える力を身に付けさせることに力を置いている気がします。言い換えれば、生徒の自発性と多様性を尊重する姿勢です。
例えば、中学に入学していきなり、相対性理論の本を読んで感想文を書かせる課題がありました。目的は相対性理論の理解にあるのではなく、本の内容に対し自分の考えをまとめて、述べることにありました。

「知識よりも考える力こそが今の時代には重要。海城の教え方は今の時代に合っていた」と話す
数学も、答えそのものよりは答えに達するプロセスを自分なりに考えることに意義があるというような教え方でした。実際、「平尾、面倒くさい解き方しているけど、そのやり方でいいよ」と授業中、先生に言われたこともあります。数学が好きであり続けられたのも、押し付けない教え方のおかげだと思います。
海城は昔に比べると東京大学合格者数が減っているという話もよく聞きます。海城の教育方針が東大合格のためにいいかどうかはわかりませんが、今の時代には非常に合っているのではないかと、ベンチャー経営者の一人として思います。
私も大学時代、経営に関する教科書をさんざん読みましたが、少なくとも、変化の激しいIT業界では情報として物足りないものでした。基本は同じですが、基本だけ理解しても成功は無理。そこから先を自分で考えながらやらなくてはいけません。知識よりも考える力こそが今の時代には重要なのです。
また、海城は明治時代に海軍予備校として創立された経緯から、スパルタのイメージも残っています。でも、少なくとも私には、とても自由な雰囲気の学校という印象のほうが強くあります。もちろん締めるところは締めますが、基本は自由。だからこそ、自発性や多様性も育まれるのではないでしょうか。
高校3年の時に掲げた目標通り、慶応SFC在学中に2つのベンチャーを立ち上げた。
慶応に入学してからは、起業に向かってまっしぐら。IT企業の経営者になりたかったので、プログラミングなどを学べる環境情報学部に入りましたが、経営学の専門授業がなかった。そこで、環境情報学部の必須科目は1年生のうちにすべて履修し、2年目からは総合政策学部の授業ばかりとっていました。