中学1年で相対性理論を考える 海城生は起業家向き
平尾丈・じげん社長が語る(下)
また、1年の夏に、「在学中に1万人に会う」という企画を勝手に立て、やり遂げました。実際にお会いした中には、ソフトバンクグループの孫正義会長やサイバーエージェントの藤田晋社長など、憧れのIT経営者も大勢いらっしゃって大きな刺激を受けました。
その間、いろいろなビジネスのアイデアを練り、ビジネスプラン・コンペでも何度か賞を獲得。その賞金を使って、在学中に法人を2つ立ち上げました。午前中は神奈川県藤沢市にあるSFCで授業を受け、午後は東京都内で営業回り、夜は都内でスタッフと会議。そんな忙しい毎日を過ごしていました。
そのまま起業家になる道も考えましたが、学生社長の限界みたいなものも何となく感じていました。学生だからこそメディアの注目も浴び、取引先や顧客も関心を持ってくれるのではないか。やはり一度は社会の荒波にもまれてみないと自分の本当の実力がわからない。そんな考えから、在学中につくった会社の取締役を続けながら、卒業と同時にリクルートに入社。二足のわらじをはく生活がスタートしました。
入社2年目に、じげんの前身となるリクルートの関連会社の立ち上げに参画し、リクルートグループ最年少の取締役として出向。その2年後に社長に就任し、さらにMBO(経営陣が参加する買収)を実施してグループから完全独立し、社名をじげんに変更した。
この関連会社というのは、海城の4つ上の先輩である内藤裕紀さんの会社ドリコムとリクルートが共同出資した会社でした。海城時代は面識はありませんでしたが、内藤さんも京都大学在学中に起業しており、私にとっては憧れの先輩でした。
リクルートに入ってからの私は、23歳で関連会社の取締役、25歳で社長、27歳でMBO、30歳で東証マザーズに上場と、20代をあっという間に駆け抜けたという印象です。大学在学中に立ち上げた会社の取締役はとうに退いており、今はじげんの経営に集中しています。
上場後は、M&A(合併・買収)などを通じて事業を拡大してきました。買収した会社はこの4年間で10社に達します。さらなる成長を目指しています。
じげんのスタッフは現在、アルバイトも含めれば約440人。ベンチャーでありながら、会社として徐々に成熟段階に入りつつあるとも言えます。実際、入社希望者の中にも、ベンチャーだから入りたいという人と、大きくて安定しているから入りたいという人の両方がいます。経営者としては、マチュア(成熟)な会社になりながらもベンチャーマインドを維持した会社をどう作っていくか、そこに焦点を合わせて組織を作っていきたいなと考えています。
(ライター 猪瀬聖)