校庭で木登りも満喫 東大卒ピアニストのフェリス時代
ジャズピアニスト・中島さち子氏が語る(上)
フェリスは、ミッションスクールということもあるのか、昔も今も、心の教育を重視しています。生徒の席次も公表しませんし、受験校ではないということもはっきりと言っています。フェリスのそうした心の教育を大切にする考えと、自由な学びを応援する姿勢は、当時の私にとても響きました。結局、フェリスだけを受験しました。
フェリスには面白い先生がたくさんいた。
中学1年の時の日本史の先生もそんな先生の一人でした。教科書に載っていないような歴史の裏話・小話、さまざまな説をとてもよく知っている先生で、最初の半年間は結局、縄文時代だけで終わってしまいました(笑)。
その先生は植物にも詳しく、時間のある時に、私たちと一緒に校庭に出て、校庭に植えられている木の説明をしてくれました。それがきっかけで、校庭の木に関心を持つようになり、友達とミニリンゴの木に制服のままよじ登ってリンゴ狩りをしたり、その木から校長室の屋根に降りたりという遊びもするようになりました。このあたりは、男子の目を気にしなくていい女子校ならではの気楽さがありました。

「本気で考えれば本気で答えてくれる。そんな懐の深さがフェリスの先生方にはあった」と話す
何度か木登りを校長先生に見つかり、「危ないですよ」と注意されたこともありました。でも、校長先生の顔は笑っていて、温かいまなざしだったのをよく覚えています。
国語の現代文の先生も、我が道を持っている毅然とした女性の先生で、印象的でした。非常に怖いと有名でしたが、物事の本質をとらえる力が鋭い方でした。授業では、朝日新聞の「天声人語」の要約をよくやらされました。
その先生の授業で、ある時、夏目漱石の「こころ」を読んで感想文を書く課題が出されたのですが、文章をコンパクトに要約するのが苦手だった私は、言われた文字数を3倍くらい超過して提出。怒られるのを覚悟していましたが、先生は怒るどころか、「面白い」と言ってくれ、さらに、どうやったら規定の文字数に収められるか一緒に考えてくれました。本気で考えれば本気で答えてくれる。そんな懐の深さがフェリスの先生方にはありました。
実は私は、入学当初はあまりクラスメートとなじめず、周りから浮いている感じもありました。でも、優しい先生やおおらかな学校の雰囲気のおかげで、徐々に友達も増え、ありのままの自分でいればいいんだと思えるようになってからは、学校生活が楽しくなっていきました。