囲碁に学んだ3つの経営の極意 グロービス堀学長
AI経営時代にも囲碁が役立つ
――囲碁を知っていて良かったと思う経験はありますか。

プロ棋士らと対局の検討に没頭する堀氏(右)
「確実に自分自身の経営能力が上がったと思いますね。囲碁の対局が終了した直後は、どちらが勝者でどちらが敗者かは分かりません。スポーツでは選手もサポーターも喜びを爆発させるから誰でも分かりますが(笑)。囲碁は最後まで冷静に判断することを要求されます。経営も同じです」
「囲碁は何回でも失敗できます(笑)。一般の経営者はそうはいかず、自覚しないまま企業へのダメージがボディーブローのように広がることがあります。グロービス・キャピタル・パートナーズの代表パートナーとしてベンチャーキャピタルも経営していますが、投資先の企業がうまくいかない場合は徹底的にどこが悪かったを分析します」
――将来、人工知能(AI)を経営に導入する際に、囲碁に親しんでいた方がAIを活用しやすいことはありますか。
「その可能性はあります。AIが囲碁のトッププロに勝ったのはビッグデータの学習だけではなく、ディープラーニングという手法で能力を高めたからです。囲碁は現在もっともAIに近い存在のひとつです。AIを使って経営を改革する上でのヒントを得られるでしょう。複雑系の組織をコントロールしていく上でも囲碁の経験は生きてきます」
――ただ30代、40代で囲碁を始めようとしても途中で挫折するビジネスパーソンは少なくありません。
「ルール自体は易しいのですが、囲碁の楽しさに触れるのは上級者か有段者になってからでしょうか。そこに到達するまでにいかに短期間で囲碁の学習に時間を投入するかがポイントですね。ある人に『自分は1年半で初段になった』と自慢され『自分は1年で初段』と目標を立てました。夏休みはほぼ囲碁で費やした時もありました」
――囲碁を通じてビジネス界で自然に人脈が築けそうですね。
「月に1回、囲碁サロンに集まります。ディー・エヌ・エーの守安功社長、ドワンゴ創業者の川上量生・取締役最高技術責任者(CTO)らです。京大の山中伸弥教授も顔を見せることがありますね」
(聞き手は松本治人)