組織文化を考え直そう 危険な上司を生まないために

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どのような人がメンバーの心を壊し、チームの生産性を下げるのか。日本のメンタルヘルス研修の草分け的存在で、多くの企業で「壊れた職場」の相談を受けてきた見波利幸氏が、その実例を「上司が壊す職場」(日経プレミアシリーズ)にまとめました。本書の一部を抜粋して紹介します。今回は、なぜ日本の会社が危険な上司を生み出し続けるのか、その構造要因を考察し、この連載を締めくくります。
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会社の管理職は、こうして不適格な人だらけになる
日本の企業の多くは、あるステージ(職位)で働いていて、そこで要件(業績で一定の数字を上げた、など)を満たした人を昇進させる傾向が見られます。たとえば一般社員として成果を出した人を課長補佐に、課長補佐の仕事で成果を出した人を課長に据えるということが多いのです。
現場で成果を上げられた人は、それだけ環境適応性も高く、下地となる知的能力、ヒューマンスキルも高いと類推して昇進させるため、一見すると合理的なように思われます。
しかし、何度も繰り返しているように、現場のプレイヤーとマネジャーでは、必要となる資質、スキルが違います。
マネジャーに必要とされる能力が、現場で必要とされる能力の延長線上にあり、より高度化するだけというのであれば、対応が可能でしょうが、違う種類の資質が必要になるために、「うちの上司は管理職に向いていない」が多発するのです。
この日本企業の登用の仕組みは、無能な管理職を生み出しやすくする側面もあります。これは、「ピーターの法則」で説明されます。
ピーターの法則とは、アメリカの教育学者、ローレンス・ピーターらによって提唱された考え方で、これを組織にあてはめると、能力主義の組織では、人は能力の極限まで出世するため、結局はその組織は無能だらけになる、というものです。
わかりやすく説明すると、現場社員として能力を発揮した社員が課長になり、課長職で能力を発揮した社員は部長になり、発揮できなかった社員は課長にとどまる、ということが繰り返されると、会社はその職位で能力を発揮できない人ばかりになる、というものです。
こうした弊害を回避するためか、私がこれまで仕事で関わりのあった何社かの外資系企業では、今いる職位だけでなく、上位職の仕事で求められる能力要件が満たされていることを確認してから、昇進させるという制度を取り入れていました。