「何様のつもり」はなぜ猛威を振るうのか
榎本博明著 「『上から目線』の構造<完全版>」
「上から」避けるクッションとは
では、アドバイスや指示をうまく伝えるには、どうすればいいのでしょう。
「自分も最初の頃はそうだったのだけど……」
「みんな慣れないうちはよくやるのだが……」
のようなクッションとなる枕詞(まくらことば)を用意する必要がある。
(第1章 なぜ「上から目線」が気になるのか 62ページ)
反対に自分が「上から言われた」という反発を感じたときは、自分の心理的な特徴や弱点に目を向ける良い機会です。何でも「上―下」「勝ち―負け」という構図で見ていないか、変化することを恐れて自分の成長の機会を閉ざしていないか――。SNSが普及し、いつも誰かとつながっているのが当たり前になり、「空気を読みすぎる」習慣が身についてしまった世代は、コミュニケーションのあり方に敏感で傷つきやすいといいます。ただ、生きていれば必ず当たる壁を乗り越えるためにも、自分の未熟さを受け入れ、メンタルを鍛えていく必要があるのです。
(雨宮百子)
◆編集者からひとこと 長沢香絵
企画のタネは7年前、じわじわと浸透しはじめていた「上から目線」という言葉が気になって仕方なかった当時の編集長と、著者の榎本さんとの雑談の中で生まれたと聞いています。
上司からのアドバイスさえ「上から目線」と言って嫌がる若者、そんな若者たちを正しく導くことができず自慢話や横柄な態度など間違った「上から目線」を発動する中高年たち――。世代間コミュニケーションの難しさを糸口に、現代社会のひずみを心理学的に分析した本書の親本は増刷を重ね、7万部を超えるヒットとなりました。
親本の刊行から7年目を迎えた今、改めて読み直してみても、内容は色あせないばかりか、ますます説得力を増したと感じられます。「駅員を怒鳴って鬱憤を晴らす中高年」「脱輪してもほめまくる自動車学校」など、近年の情勢も加筆した完全版、ぜひお読みください。