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また、プロジェクトNで発表内容が優秀と認められると、経営コンサルタントの助言や年間総額1000万円の資金援助を得ながら、本格的に起業を目指すことができる。プロジェクトの選考委員を務めるのは、N高の理事も務めるカドカワの川上量生社長、ドワンゴの取締役を務める夏野剛・慶応義塾大学特別招聘教授、実業家の堀江貴文氏ら、そうそうたる顔ぶれだ。

山田さんは「ディープラーニングを勉強中」

山田さんは「ディープラーニングを勉強中」

こうした独特のカリキュラムに魅力を感じてN高を志望する生徒も多い。3年生の山田陽大さんは、群馬県内の進学校に通っていたが、プログラミングを勉強したいという思いが募り、1年生の冬にN高に転入した。N高のことは広告で知り、「これだ、と思った」という。

通学には片道2時間かかるが、それでも通学コースを選んだのは、「いろいろなイベントに参加する機会が多く、IT業界とのつながりもできる」からだ。「現在はディープラーニング(深層学習)を勉強中。将来はプログラミングで社会貢献したいが、当面はプログラミングをさらに深く学ぶため大学に進学するのが目標です」と抱負を語る。

同じく通学コースに在籍する2年生の小林優子さんは、毎年、多くが東京大学に合格することで知られる私立の中高一貫校からN高に進学した。「学習方法が自分に合いませんでした。N高は自分のペースで勉強できるのがいい」と話す。小林さんは、卒業に必要な単位を早々にとり、残りの時間をフルに受験勉強にあてる計画だ。

「自分のペースで勉強できるのがいい」と話す小林さん

「自分のペースで勉強できるのがいい」と話す小林さん

開校してまだ2年余りだが、大学進学の成果も出始めている。1期生が巣立つのは来春だが、転入組の中からはすでに卒業生が出ており、18年には東京工業大学や筑波大学、慶応義塾大学、早稲田大学、東京理科大学などトップ校を含む多くの大学に合格者が出たという。

eスポーツの日本代表も

進学実績だけではない。4月に米国で開かれた19歳以下の国際バレエ・コンクール「ユース・アメリカ・グランプリ(YAGP)」で、1年生の立花乃音さんがシニア女子部門で「トップ12」入り。高校生がプログラミング能力を競う5月の「第12回アジア太平洋情報オリンピック」では、3年生の清水郁実さんが、灘高校、筑波大学付属駒場高校の生徒と並んで銅メダルを受賞した。最近注目のゲーム対戦競技「eスポーツ」でも、3年生の相原翼さんが「第18回アジア競技大会」に向けた日本代表の12人に選ばれるなど、多彩な才能が花開いている。

奥平氏はこの間の成果を評価しながらも、現状に満足する様子はない。課題は「イメージと認知度のアップ」だという。N高の知名度は、まだ一般には高いとはいえず、通信制に対する社会の固定観念もあって、入学や転入に親や周囲が反対するケースもあるという。奥平氏は「情報発信やカリキュラムの充実に一層力を入れていくと同時に、全員が『自分はN高の生徒だ』と胸を張って言えるような学校にしていくことが非常に重要」と力を込めた。

(ライター 猪瀬聖)

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