「伝わらない」悩みを解消 刺さる資料はこうつくる
松上純一郎著 「ドリルで学ぶ!人を動かす資料のつくりかた」
また、グラフでは積み上げ、横棒、散布図など5種類の型をまとめ、どんなデータがどのグラフに合うかを示します。文章だけでは複雑になってしまう説明も、表現したい事柄に合う図解やグラフを見つけ、型にはめることで伝わりやすくなるのです。
「型」を学んで、世界に通じる資料を
一人歩きするようにつくった資料は国境も越える力を持ちます。その例として著者は、NGOでの経験を明かします。英語が苦手だった著者は、アフリカの栄養改善プロジェクトを実施するため、現地のNGOと接点をつくろうとやり取りを始めます。そのとき、図解を使った資料が役に立ったといいます。
いくつかの現地NGOからメールでの返答があり、直接日本の我々に電話をかけてきてくれたところもあったのです。その現地NGOとはそれがきっかけでプロジェクトを共にすることになりました。
(1章 図解とグラフで人を動かす コラム1 16ページ)
本書は、多くの人が中学・高校時代になじんだ学習参考書風のつくりになっており、図やグラフの例がたくさん盛り込まれています。ドリル形式の練習問題は「リーマンショックの影響」「モスバーガーとマクドナルドの比較」「携帯キャリア3社売上高」といった身近な題材で、これを考えていくうちに図解・グラフづくりの勘どころが身に付くようになっています。図解やグラフをつくれば、アタマが整理され、新たな発見も生まれるといいます。
伝え方は相手によって変わる
説得力のある資料を素早くつくるスキルを解説する一方で、著者は相手や事柄に応じて最もふさわしい伝え方を考えるのが重要だと説きます。
(2章 図解は「型」で選ぼう コラム2 34ページ)
「資料作成の技術は、コミュニケーションツールだ」という著者の信念が本書を貫く骨格です。わかりやすく人に伝えるためのヒントが詰まった一冊です。
◆編集者からひとこと 雨宮百子
別の企画をきっかけに著者の松上さんとお会いし、資料作成の入門講座に参加させてもらいました。そこで本書の練習問題と同じような課題に挑戦するうち、「ドリル形式で資料作成のコツをマスターする本ができないか」というアイデアが芽を出し、形になっていきました。
出版に当たって神経を使ったのは色の使い方でした。パソコンでつくる資料に色の制限はありませんが、書籍では使う色を絞らなければなりません。コストを下げ、手ごろな値段でお届けするためです。色の濃淡で、図解をどう見やすく表現するか、強調の方法はこれでよいのか、と何度も著者とやりとりしたのが印象に残っています。
パソコンがなくても、いつでもどこでも勉強できる。しかも身に付いた考え方や手法は、一生もののスキルになる――。そんな狙いで本書は生まれました。「伝わらない悩み」を「伝わる喜び」に変える一冊です。