お笑いもコンサルも、下手なネタを見せてこそ育つ
東大卒お笑いタレント 石井てる美氏

ヒラリー・クリントンさんにふんした石井てる美氏。場数を踏み、本人になりきっている(米ニューヨークにて)
マッキンゼー・アンド・カンパニーで働いた経験を持つお笑いタレントの石井てる美さんが、コンサルティングとお笑いに共通するスキルなどを紹介する連載。今回のテーマは「まずはとにかくアウトプットする」。コンサルもお笑いも「仮説=ネタ」を何度も検証し、練り上げていくことが大事だという。
1点のネタを3点→10点→40点→90点…に
お笑い養成所ワタナベコメディスクールに通っていたとき、私が選択したクラスでは週に2回ネタ見せの授業がありました。みんな初心者なりに考えてきたネタを、構成作家やベテラン芸人さんなどの講師陣とクラスメートの前で披露し、アドバイス、通称ダメ出しをもらいます。
ネタ見せではお笑いライブのお客さんのように積極的に笑いに来ているわけでもなく"審査する目"になっている大人たちと静かで大きな部屋の中で机越しに対面。その中でマジメにふざけるという、芸人にならない限りなかなか遭遇しないシュールなシチュエーションでネタが試されることになります。たいていの場合、笑いなど一つも起きず、ネタを終えて心が折れかけているそばから、多くの人が見ている前でダメ出しをされ、ときには辛辣な言葉も浴びせられます。
さて、そうなると養成所時代に何が起きたかというと、ネタ見せの授業でネタを披露しない人が増えた時期がありました。「こんなんじゃダメだ」「またいいネタができなかった」など、心中は察することができます。しかし、言わずもがなですが、どんなに未完成でへっぽこなネタでも、何もしないよりは、何かしらのネタをアウトプットとして見せる方がはるかに意味があります。
最初は1点のネタでも、ネタ見せや周りからのアドバイスを受け、自分の気づきも反映させ、そこから3点→10点→40点→90点…、と改良を重ねて徐々に理想のネタに近づけていけばいいのです。最初から自分の中で100点のネタを披露できればいいですが、そのようなケースはほぼ存在しないでしょう。1点からは改良することができますが、ゼロからは改良のしようもないのです。まずは100点に遠く及ばずとも張りぼての自信を持ってネタを披露し、この世にネタの卵を産み落とす勇気から全てが始まると思っています。