できないとイラッ 出世が遠のく部下育成の落とし穴
20代から考える出世戦略(39)
業務マニュアル的に手順を教えることが仕事を教えるということであれば、もちろん、教える側が自分でやった方が早いでしょう。教えるという行為は、教える側がすべてを知っていて、教えられる側がそれらを知らない状態でしか機能しないからです。
ただここで考えてみてください。あなたに部下指導を指示した上司は、やり方を教えることを期待していたでしょうか? たしかにあなたが受け取った指示は「仕事を教えろ」だったかもしれませんが、だとすれば「仕事を教える」ことのゴールとはなんでしょう?
おそらくそのゴールとは、仕事の手順を教えた結果、やがて部下が自分一人で仕事ができる状態になるまで育てることではないでしょうか。言い換えるなら「これやっといて」で任せられる状態が、仕事を教えることのゴールなわけです。
だとすると仕事の手順を教えるだけでは不十分であることがわかります。
最初に教えるべきは仕事の相手と目的
逆に部下の立場で考えてみれば、手順を教えてもらったとしても、それが単純作業だとしたらやる気がわきません。仮にチャレンジングな作業だったとしても、自分のスキルよりも難しいことだったらストレスを感じることでしょう。そうして教えてくれた人を見ると、いかにもトロい奴だな、と言わんばかりのバカにしたような態度をとっているとすれば。
さらに「やっぱり君がするより俺が自分でやった方が早いわ」なんて口にされた日には、やる気すら消えてしまいます。
しかし手順よりも先に、この仕事が何のためのものなのか。誰に対して価値を提供するものなのかを説明されたとしたらどうでしょう。その上で手順を説明されたとしたら、部下のやりがいや物覚えは明らかに改善します。
場合によっては「このやり方をこう工夫すればもっと良くなりませんか?」という提案だって出てくるかもしれません。