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女性活躍 本気度が問われる

――浅井さんは社内で女性社員の活躍を支援する「ウィメンズ・ネットワーク」の代表をしていました。女性活躍推進のカギはなんでしょうか。

「経営トップのコミットメントが大事なのは言うまでもありませんが、その本気度が問われていると思います。単に『女性を管理職に』と言うだけでなく、例えば、会社の一番大事なプロジェクトの責任者に女性が入っているかどうか。大事な会議で女性がアシスタントとしてではなく、メインテーブルに座って、議論に参加できているかどうか。建前で終わらず、どこまで具体的にやっているかが重要なのです」

社長になってからも社内のランニング愛好者との皇居ランを続けている=浅井英里子氏提供

社長になってからも社内のランニング愛好者との皇居ランを続けている=浅井英里子氏提供

「もう一つはコミュニティーづくりです。当社のウィメンズ・ネットワークは社内だけでなく、社外の人ともつながるイベントも積極的にやっています。女性たちがロールモデルに出会うためには社内外を問わず、いろいろな人と交わりを持ったほうがいいですね。いま私自身もロールモデルにならなければいけない立場にあるので、できるだけ時間を作ってそうした場に出るようにしています」

――ご自身がトップに立って半年。どんなことを感じていますか。

「びっくりしたのは、社長になると決まった数日後に、本社の副会長とテレビ会議がセットされ、不安だらけの私に対して画面の向こうから『エリコは絶対大丈夫』とすごい自信に満ちた表情で励まされたことです。私のほうが『どうしてそこまで確信を持てるんですか』と聞きたくなるくらい(笑)」

「さらにはグローバル人事のトップを務める女性ともテレビ会議があり、『そうは言っても不安でしょう。私だって女性で初めてのリーダーになった時はそうだった。だから何か心配なことがあったらいつでも連絡して。そのために私はいるの。そして不安を持つことはいいことよ。絶対成長するんだから』と自らの体験と重ね合わせて話してくれて、すごく勇気づけられました」

――社長になってそこまでバックアップしてもらえるというのは、なかなかないですね。

「その他にもわざわざ日本まで来て、一緒に挨拶回りをしてくれた幹部もいました。来日した幹部たちは、わずか1日程度しか一緒に過ごさなかったのに、帰る時にはシャワーのようにフィードバックを浴びせてくれました」

「日本人にありがちですが、私も『まだまだ未熟者ですが』などと必要以上に謙遜する癖があります。そんな時は、『絶対その言葉は言っちゃダメ。エリコはもっと自信を持っていい』とか。『周囲が、女性社長というので特別視することも多いだろうけど、あなたはチーフ・ダイバーシティ・オフィサー(CDO、多様性に関する最高責任者)ではなくCEO(最高経営責任者)なのだから、ビジネス視点のメッセージを大切に』とか、具体的なアドバイスばかりです」

「GEでは『リーダーシップ』とは『変化を起こし、人を勇気づけたり動機づけたりする影響力』のことを指すのですが、まさに今回のことで、その言葉の真の意味や、トップリーダーの人材育成への情熱を改めて感じました。私自身もそういうリーダーでありたいと思います」

浅井英里子
 1968年、商社マンだった父の赴任先のロンドンで生まれた。1992年慶大法卒、ソニーに入社。2003年日本マイクロソフトに入社し、政策企画本部部長代理。11年GEヘルスケア・ジャパン入社。13年日本GE(現GEジャパン)執行役員。15年専務執行役員。18年より現職。

(ライター 石臥薫子)

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