SNSで響いた開発ストーリー 地方酒店がヒット連発
経営コンサルタント 竹内謙礼(7)
「名前だけのオリジナル酒は絶対に嫌でした」
そう考えていた金原弘晃店長は、オリジナル日本酒を造るために原材料となる酒米の田植えから始めることにした。稲刈りも自分で行い、自ら作ったお米を酒蔵に持ち込み、仕込みにも同行した。これらの体験談をフェイスブックに投稿し、お客様と一緒になってオリジナルの日本酒ができるまでの工程を楽しんでもらうことにした。
そして完成したオリジナル日本酒「キンサケジュンマイシュ」をインターネットで予約販売したところ、300本が即日完売となった。その後、第2弾の600本も完売、第3弾も好調に売れ続けた。
「誰でも簡単にオリジナル商品を作ることができる時代です。いくら店頭でオーダーメイドを訴えても、それだけで商品が売れることはありません。これからは商品の良さを理解してもらうために、自分自身が開発ストーリーの中に入り込んで、独自情報を発信していかなくてはならないと思います」
金原さんの思いが伝わったのか、「キンサケ」のシリーズは市外からの購入者が多いという。「そのお店でしか売っていない」というブランディング戦略は見事に成功した。
* *
金原酒店のオリジナル日本酒が売れた理由は、商品が完成するまでのストーリーをフェイスブックで公開したことが大きい。
すなわち「完成したオリジナル商品」を見せるのではなく、商品が完成するまでの「ストーリーのオリジナル」を見せることで、商品の魅力を際立たせたのである。
SNSのタイムリー性を利用し、定期的に情報を発信することで、お客様に「この先、どうなるんだろう」という期待感を持たせ、ストーリーにのめり込ませていった。その結果、オリジナル商品の開発だけではなく、ファン作りも成功させることができた。