苦しみ抱える人の居場所つくる 「教育への志」を実践
LITALICO執行役員 深沢厚太氏(下)

LITALICO執行役員の深沢厚太氏
東大出身、元マッキンゼー・アンド・カンパニーのコンサルタントという経歴を経て、障害者支援を手掛けるLITALICO(りたりこ)で、発達障害や学習障害を持つ子どもに対する学習・教育支援事業に取り組む執行役員の深沢厚太氏。高校時代、同級生の死をきっかけに抱いた教育への志を、常に再確認することでキャリアを切り開いてきた。意志を貫くことを、可能にしたものは何だったのか。(前回の記事は「『教育とは変化を起こすこと』 高校での悲劇胸に挑む」)
毛嫌いされながらも伝えた熱意
大学時代の教育実習で、憧れていた教師の道に違和感を覚えた深沢氏。新卒で飛び込んだのはコンサルティング業界だった。経営コンサルといえばスマートなイメージが強いが、自ら手を挙げて数多く取り組んだのは工場など現場の生産性改善にかかわるプロジェクトだ。
「例えば製薬企業の工場であれば、薬のタブレットを作り、パッケージングし、さらにそれを収める箱を作り、詰めて出荷へ――という一連のラインがある。各工程に掛けるコスト・時間を削減する方策を考え、現場のスタッフへ提案するのが仕事です。流れてくる箱の位置の微調整など、無駄の削減を秒単位で積み重ねることで、大きな生産性向上につながります。地道な仕事ですよね」
"何となく続けてきたこと"を変える。経営層は改革に乗り気でも、現場のスタッフには「ピンときていないことも多い」。作業服を着て現場に入ると、初めは毛嫌いされた。それでも、一緒に食事をしたり、他愛のない雑談を重ねたりしながら、相手の懐に入り込んでいった。
「関係ない話をしているときに相手から、『あのライン、もうちょっとこうすりゃいいんだけどな』というアイデアがこぼれてくることがあるんですよ。そこを『今、めっちゃいいこと言いましたよ!』とすかさず拾う(笑)。それでも相手の反応は薄いことも多いんですが、実際にやってみて、成果が上がるとだんだん前向きになってくる。1人が変われば、2人が変わる。赤字工場が息を吹き返していく。それは自分がやりたかった、教える側と教えられる側の区別がない、対等な"教育"の在り方に通じるところがあった。とてもやりがいがありました」