「現場へGo!」 マクドナルド社長の危機突破力
日本マクドナルドHDのサラ・カサノバ社長兼CEO(上)
「その後、いったんカナダに戻ってから、次にトルコのイスタンブールに派遣されました。トルコもロシア同様、カナダとは言葉も文化も全然違いました。ロシアもトルコも自分の当たり前が通じない世界でしたが、そういう時こそ、自分の当たり前や思い込みを捨て、お客様や現地のスタッフと直接コミュニケーションをとることが大切だということを肌で学びました」
「また、現地での私の重要な任務の一つは、現地の人たちをマーケティング部に採用して彼ら、彼女らを戦力になるよう教育することでしたが、その際も、まずは自分と言葉も文化も違う相手のことをきちんと理解しようと努めました。その後も様々な国に赴任しましたが、この若い時の海外経験が大変役に立ちました」
異物混入のときは47都道府県すべて回った

日本の消費者の味やサービスへの要求度は世界一高い
――04年、日本マクドナルドのマーケティング本部長として初めて日本に赴任しました。
「その時も、大勢のお客様や店舗のスタッフと直接話をすることで、日本市場について多くのことを学びました。日本の消費者は味、サービス、店舗の清潔度、その他いろいろな面において、私たちに対する要求が世界一高いことを知り、非常に勉強になりました」
――2度目の赴任となった今回は、CEO就任後間もなく、原料を仕入れていた中国の食品加工会社による使用期限切れ鶏肉使用疑惑が発覚。その半年後には、複数の店舗での異物混入が報道され、業績低迷に追い打ちを掛けました。
「一連の問題への対応は簡単ではありませんでした。私や会社の実力が試される状況の中、まず取り組んだのは、落ち込んだ消費者の信頼を取り戻すため、鶏肉の輸入元をタイに変更したり、外部の専門機関による店舗の抜き打ち検査を実施したりして、メニューの安全と品質をお客様に保証することでした」
「取り組みのもう一つの柱は、やはり現場に行って徹底的にお客様の声を聞くこと。私自身も47都道府県をすべて回り、お客様、特に小さな子どもを持つお母さん方の声にじっくり耳を傾けました」
「店長やスタッフとも対話を重ねました。ミーティングでは最初に必ず、私のほうからサンキューと感謝の意を伝えました。厳しい逆風の中でお客様に対応するという最も大変な役割を担っているのが、彼、彼女たちだからです。店長たちは非常に率直に問題や要望を伝えてくれました。私にとって貴重な体験でした」