「自分を知る」が学びの基礎 フィードバック求めよう
リクルートワークス研究所主任研究員 辰巳哲子氏(4)

プレゼンテーションし、フィードバックを受けるのも「学び」の道のり。写真はイメージ=PIXTA
生き生きと働き続けるための「大人の学び」の極意は何か。リクルートワークス研究所主任研究員の辰巳哲子氏が解説する連載、今回は「学ぶ力」を鍛える3つの方法を伝授する。
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何年も前の知識にこだわって同じ教訓ばかり話す。知識は多いはずなのに、何が言いたいのかわからないような文章を書く――。あなたの周囲にこんな人はいませんか? 原因は、その人の学ぶ力が弱いせいかもしれません。ではどうすれば、学ぶ力を鍛えられるのでしょう。今回は「学び方を学ぶ」「何がわかっていないのかを知る」「すべての人から学ぶ機会をつくる」という3つの観点から、学ぶ力の強化法を紹介します。
学びについての研究、大きく進歩
ここ10年で、脳科学や認知科学の分野などでの学び方についての研究が一気に進みました。そこで実証された、学び方に関する講義の動画や書籍が次々に世に出ています。バリエーションが増えた「効果的な学び方」から、自分に合う方法を見つけることができそうです。
たとえば、米オークランド大学のバーバラ・オークリー教授は、大学の講義をネット配信するサービス「コーセラ」で、「learning how to learn(学び方を学ぶ)」という講座を開いています。200カ国で200万人以上が学ぶ人気コンテンツです。ここでオークリー教授は、脳には「集中モード」と「拡散モード」という二つのモードがあり、それをうまく使い分けながら学ぶと、アイデアが生まれやすいと解説しています。
米国の研究者、アーリック・ボーザー氏は著書「Learn Better」で、科学的な研究の成果に基づいて、学習を効果的にする6つの方法を示しています。(1)価値を見いだす、(2)目標を設定する、(3)能力を伸ばす、(4)発展させる、(5)関係づける、(6)再考する――です。ここでは「再考する」つまり、今までの考えを見直し、自分にわかっていないことを知ることについて事例を紹介しましょう。