前日銀総裁の回顧録 金融街・大手町で異例の売れ行き
紀伊国屋書店大手町ビル店
著者は、中央銀行や金融政策をめぐる議論に「必要な材料を提供することがすべての出発点である」と執筆意図を明示する。金融政策ばかりでなく、中央銀行と政治や社会との関係、金融市場やメディアとの相互作用、さらには組織・人材論にまで射程を広げた記述は、白川総裁時代の政策の是非を論じるだけでなく、中央銀行そのものを考えるうえで多様な論点を提示しているといえるだろう。
黒田日銀支えた岩田前副総裁の本も
「店頭に並んで3週目だが、まだ勢いがある。追加注文を出して再入荷したが、また本が少なくなってきた」と、ビジネス書を担当する西山崇之さんは話す。版元の話では、この店と日本橋の丸善、日銀内の書店からは追加注文が入っているそうだ。先週末には黒田日銀で副総裁を5年間務めた岩田規久男氏による『日銀日記』(筑摩書房)も店頭に並んだ。2冊合わせてここ10年の日銀の政策決定を当事者の視点から検証できる、またとない機会だ。
それでは、先週のベスト5を見ておこう。紹介するランキングは単行本全体が対象だ。
1位は三菱UFJ信託銀行信託博物館事務局長が歴史をひもといて語った信託入門書。2位は採用支援コンサルタントによる中小企業向けの採用論。いずれもまとめ買いが入ってのランクインだ。3位は、ファミリーマートとユニーの経営統合を主導し、ユニー・ファミリーマートホールディングスの初代社長を務めて現在は同社相談役の著者が、仕事との向き合い方から恋愛や生き方まで語った本。著者イベントを開いたことで売り上げを伸ばした。4位が話題のドラマの原作小説で、同率5位の一冊に今回紹介した本。店頭での売り上げが『下町ロケット』に次ぐというのは、なるほど金融街大手町ならではだ。
(水柿武志)