オーケストラにもお国柄 N響指揮者の対話法とは
NHK交響楽団 首席指揮者 パーヴォ・ヤルヴィ氏(下)
――日本人は上に従順ということでしょうか。
「従順というよりは、プロフェッショナルと言ったほうが正しい表現です。日本の奏者は自分をしっかり持っていますし、頑固なところは頑固です。また、常にベストを尽くそうとしますし、ミスは許されないという気持ちも強い。日本のオーケストラを指揮することは、大きな喜びです」
女性指揮者を増やすことは極めて重要

「女性指揮者を育てたい」と語るヤルヴィ氏
――若手指揮者の育成にも熱心と聞きます。
「私は米国に移住していますが、生まれ故郷のエストニアで、指揮者を養成するためのスクールを運営しています。毎夏、世界中から20代を中心とする若手の指揮者が集い、実践的な練習を通じて技術を磨いています。また、受講生の半分を女性とする方針も掲げています。今年の夏は、半分には達しませんでしたが、それでも18人中、6人が女性でした」
――確かに、ビジネスや政治の世界では女性リーダーの台頭が目立ちますが、女性指揮者は、あまり見かけません。
「これまで女性指揮者がほとんどいなかった理由は、他の多くの分野で女性リーダーがいなかったのと同様、女性はリーダーになることを奨励されていなかったからです」
「最近は女性の指揮者も急速に増えています。実際、私が首席指揮者を務めるNHK交響楽団の2人のアシスタント指揮者のうち、1人は女性です。しかし全体から見れば、女性指揮者はまだ圧倒的に少数派です」
「女性指揮者にとって大きな問題は、ロールモデルの不在です。男性指揮者の場合は、カラヤンやバーンスタインをはじめロールモデルはいくらでもいます。女性も男性指揮者を手本とすればいいではないかとの考え方もあるかもしれません。しかし女性は、指揮者としての体の動かし方や奏者とのコミュニケーションの取り方などが、どうしても男性と違うので、男性指揮者をロールモデルとするのは難しい面があります」
「現状、女性指揮者のロールモデルがなかなかいない中では、彼女たちの指揮の技術が向上するよう、直接支援することが大切です。私のスクールで女性の受講生を多くとっているのも、そのためです。女性の指揮者を増やすことは、クラシック界全体のためにも非常に大切なことだと私は思います」
旧ソ連(現エストニア)生まれ。米カーティス音楽院を出て、シンシナティ交響楽団音楽監督、パリ管弦楽団音楽監督などを歴任。現在はNHK交響楽団首席指揮者、ドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団芸術監督などを兼任する。
(ライター 猪瀬聖)