アタマのやわらかさとは 価値創造の核、編集者が分析
リブロ汐留シオサイト店

メインの平台中央に面陳列で展示する(リブロ汐留シオサイト店)
ビジネス街の書店をめぐりながら、その時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は定点観測しているリブロ汐留シオサイト店だ。企画系の本が売れ筋に並ぶ同店だが、目立った新刊が少ないのか、ランキングには今年前半に刊行された本が目に付く。そんな中、新刊として上位に食い込んできたのは、広告クリエーター系のヒット本を数多く手がけた編集者による、創造的な思考法の原理を考察した一冊だった。
スタークリエーターの発想読み解く
その本は松永光弘『「アタマのやわらかさ」の原理。』(インプレス)。松永氏は広告・デザイン本の編集を手がけ、数々のヒットを飛ばしてきた書籍編集者だ。熊本県のゆるキャラ「くまモン」のプロデュースで知られる水野学氏など、様々なスタークリエーターの本を編集してきた。自身の編集の経験と、本作りを通じて接してきた多くのクリエーターの発想法を素材にして、クリエーターの思考の原理を「アタマのやわらかさ」という観点から考察したのがこの本だ。
著者は、世の中には「ちょっとかわったもののとらえ方」ができる人がいると書き始める。そのエンジンになっているのが「アタマのやわらかさ」だという。著者の定義によれば、「柔軟に物事を見つめなおし、とらえなおしていく思考力」だ。親交のあるクリエーターを手がかりにその原理を考えると、「ひらめき」ではなく、「発見」を重視しており、発見するためにクリエーターたちはアタマの中でたえず「編集」をしていると指摘する。
「編集」が生むアタマのやわらかさ
著者が重視するのは、この「編集」というアタマの使い方だ。著者によれば、編集とは「組み合わせによって価値やメッセージを引き出すこと」だ。例えば、渋谷のハロウィーンに集まった仮装した若者の写真に戦後すぐの渋谷の写真を組み合わせる。すると、ハロウィーン写真は渋谷のいまの姿として発展や未来といったニュアンスを持ち始める。貧しいアフリカの子供の写真を組み合わせると、ハロウィーン写真は豊かな国の若者たちの恵まれた日常を表す写真に価値が変化し、ややもすると批判的なニュアンスを帯びてくる。これが編集だ。