職場でキレず正しく怒れ アンガーマネジメントの本質
「アンガーマネジメント 品質管理は心の管理」 正木忠氏
本書では、怒りを遠ざける心の持ちようや気持ちが揺れ動くメカニズム、働き手のメンタルに配慮した仕事環境づくりのコツなども紹介している。正木氏は、特に個人でできるアンガーマネジメントの手法として「視点を変えて物事をとらえる」訓練を提案する。
たとえば、自分が並ぶ行列に誰かが割り込んできた場合。割り込んだ人は列に気づかなかっただけで、悪意はなかった可能性もある。だとすれば、腹を立てず、列の最後尾へ回るよう穏やかに促せば済む。相手は恐縮して後ろへ回るかもしれない。「自分の視点をずらすというテクニックを覚えるだけで、怒りのきっかけは減る」(正木氏)
感情のコントロールに自信がない人は、感情表現そのものを抑える方向に傾きがちだ。しかし、部下の前で無表情を通したり、常に怒ったような顔で「強面(こわもて)」と呼ばれたりするようでは、周囲とのコミュニケーションが難しくなりかねない。
実は正木氏自身、かつては「いつも怒った顔をしている」といわれたそうだ。しかし、「アンガーマネジメントを学んで笑顔が増えた。昔は、単に感情表現が下手なだけだった」と振り返る。日本人は感情表現が下手とされるが、セルフコントロールするスキルを学ぶなかに上達への道があるのかもしれない。
自分が攻撃的な態度を見せれば、相手も身構えてしまい、腹を割った話がしにくくなるだろう。それでは「損をするばかり」(正木氏)。とっつきにくいといわれる人でも、「後からスキルを学んで表情や態度を変えられるケースが多い」と正木氏はみる。「こっちの思いが伝わらない」と嘆く前に、相手を怖がらせていないかどうか、鏡に向かって確かめてみてもいいだろう。
日本アンガーマネジメント協会認定のアンガーマネジメントコンサルタント。1967年生まれ、同志社大学卒。アパレル企業に勤めた後、ブライトンコンサルティングに転職。2003年から代表取締役。中堅中小企業を中心に経営戦略や人事評価制度、ISOなどのコンサルティングを手掛ける。13年、アンガーマネジメントファシリテーター資格を取得。