東大卒マジシャンが指南 マジックを仕事に生かすタネ
「世界が認めた東大卒マジシャンが教える 不可能を可能にする超仕事術」 入江田翔太氏
観客との距離、縮めてショーを熱く
ビジネストークに役立ちそうな、マジシャンならではのノウハウに「距離」の設定がある。入江田氏は観客の近くで披露するマジックを得意とする。世界大会で優勝した際も、手の届きそうな距離で、テーブルの周り360度を観客が取り囲むネタを選んだ。
「距離が近いほうがインパクトが強まる。誰しも『近いほうがタネを見抜きやすい』と思い込んでいるからだ」(入江田氏)。至近距離で見抜けなかったときの驚きは称賛に変わる。しかもうたぐり深い観客ほど大きな賛辞を贈ってくれるため、ショーはぐっと盛り上がり、進めやすいムードが醸し出されるという。

観客の予測を超え、驚きをもたらすのがマジシャン
ビジネストークでは、大きなテーブルを挟んで向き合うといった場面も珍しくない。だが、互いに距離があると議論や交渉の濃度が下がりがちだ。入江田氏は「狭めの応接室に場所を移すだけで、物理的な距離が縮まり、やりとりもリアルになるはず」と指摘し、「接近戦」を促す。難敵を敬遠せず、懐に飛び込む態度が「最強のパートナー」獲得につながるかもしれない。
緊張と解放を意識
何種類ものマジックを続けて披露するとき、2番手以降のタネは観客の目の前で仕込むことも多い。入江田氏は「最もやりやすいのは、先のマジックを終えて拍手が起きている間。盛り上がっている瞬間、人の注意力はゆるみがちだ」と明かす。息をのんで見つめた後、予想を超えるマジックの結末をみせられ、緊張から解き放たれた瞬間だ。
商談やプレゼンで思いのほか良い反応があったら、一呼吸おいて交渉の「本丸」に切り込むような応用も考えられそう。相手の反応をみてアドリブを使えるようになれば、交渉術もステップアップしたといえるだろう。
マジシャンは舞台の上で「2人のクライアント」を意識しているという。一人は対面している観客、もう一人は自分を呼んでくれた主催者だ。観客が喜べば、もてなす立場の主催者も、まずは「この人を選んでよかった」と感じてくれる。