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振り回されるエリートたち

本はいったん選挙前の関係者のやりとりに戻った後、ほぼ時間軸に沿ってこうしたオーバルオフィスでの迫真のやりとりを次々と描き出していく。登場人物はホワイトハウスのスタッフから閣僚、中央情報局(CIA)などのインテリジェンス・コミュニティーのメンバーまで幅広い。北朝鮮、アフガニスタン、シリア、イランなど、外交関係をめぐる動き、貿易協定や税制をめぐっての議論、ロシア疑惑の捜査への反応や対応――再現されたシーンは、権力基盤そのものや米国、世界情勢を左右する重要案件ばかりだが、話の構造はいつもトランプ氏の発言や行動に周りが振り回される図式だ。読んでいてただただ恐ろしくなる。

エリートたちの常識が全く通用しない。しかし、エスタブリッシュメントのエリートたちへの反感や置き去りにされた人々の希望を背負って登場したのがトランプ大統領なのだから、始末をつけるのは容易ではない。

「入荷したばかりだけど、事前に話題になっていたこともあって反応が早いようだ」とビジネス書を担当する西山崇之さんは話す。2月に刊行されたトランプ政権の暴露本、マイケル・ウォルフ『炎と怒り』もベストセラーになったが、それ以上のインパクトが本書にはあるようだ。

注目のモビリティー革命の解説書が上位に

それでは先週のベスト5を見ていこう。

(1)【究解】信用リスク管理尾藤剛著(金融財政事情研究会)
(2)40代オーナー社長のための経営のバトンリレー山田勝也編著(幻冬舎)
(3)トランプ貿易戦争木内登英著(日本経済新聞出版社)
(4)中央銀行白川方明著(東洋経済新報社)
(4)MaaS モビリティ革命の先にある全産業のゲームチェンジ日高洋祐ほか著(日経BP社)
(4)ビジネスフレームワーク図鑑株式会社アンド著(翔泳社)

(紀伊国屋書店大手町ビル店、2018年11月26日~12月1日)

1位は、金融機関の信用リスク管理業務の実務書。2位は、事業承継を念頭に置いた戦略と経営管理を説いた新書だ。3位は、米中の貿易戦争の分析を軸に日本への影響などを論じたエコノミストの著作。同率4位に3冊が並ぶ。前回訪問したとき紹介した前日銀総裁の本は、金融街大手町ならではの売れ行きが続く。

2冊目の表題にあるMaaSはモビリティー・アズ・ア・サービスの略で、移動手段をサービスとして使うことをさす。本書では、これをもっと広範囲にとらえ、交通サービス分野のパラダイムシフトにとどまらず、まちづくり、エネルギー業界から不動産・住宅、保険、観光、小売りまでを巻き込む全産業のビジネス変革として読み解く。もう一冊はビジネスのアイデア出しや戦略立案、市場分析などに使えるフレームワークを70例集めた本。記入例やパワーポイントのテンプレートもついており、すぐ使える実用的なスキル本だ。紹介したトランプ本は1日分しか集計されず、この週の上位には入らなかった。

(水柿武志)

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