日本初のJAL女性機長、桐朋で培った「諦めない心」
藤明里・日本航空機長が語る(下)

藤明里・日本航空機長
日本初の女性旅客機機長として、今も乗務を続ける日本航空の藤明里さん(50)。大学受験のころにはすでにパイロットという目標を抱いていた。国内に女性機長の前例はない。だが、「性別が関係する仕事ではないはず」と信じて、挑戦を続けられたのは、桐朋学園の9年間が培ったあきらめない心だった。
最近、乗務中にちょっと驚いた出来事があった。
お客様の一人から操縦席にいる私に客室乗務員を通じて伝言が届きました。小学生のお嬢さんがいる女性でした。「娘がパイロットになりたいと言っているので、ぜひ娘に何か一言書いてくださいませんか」と。
降機後にそのお客様にお会いすることができたのですが、詳しく聞いて驚きました。学校の先生に「女性はパイロットにはなれない」と言われて、娘さんががっかりしているというのです。その日の機長アナウンスは私の声だったので「女性でもパイロットになれるんですね」とお母さんが喜んでいらっしゃる。いまだに「女性だから」と道をさえぎるようなことを言う人もいるのかと、びっくりしてしまいました。
女性だからとか、前例がないとか、考える人がいる一方で、桐朋で自由を尊重し、夢とか可能性を否定しない環境で育ったせいか、私はそんな理由で諦めるということを知らなかったのです。
桐朋ならではのユニークな校風で、今も強く思い出す行事が2つあります。1つは小中高ともに盛んだった登山です。山梨県の八ケ岳に桐朋学園の寮があり、小学校から毎年のように出かけて登山やオリエンテーリングをしていました。八ケ岳連峰最高峰の赤岳にも、途中まででしたが、登りました。
オリエンテーリングがいかにも桐朋らしかった。自分たちで4、5人のグループを作り、地図とコンパスを持って「放たれる」のです。一応先生はポイントごとに立っていますが、基本的に手助けなしです。