将棋で磨く「仕事の勘」 ゴール目指す戦略立案力培う
「仕事は将棋に置きかえればうまくいく」 加藤剛司氏
会社の戦力を駒に見立てれば、チームワークの重要性もみえてくる。加藤氏は「将棋の駒は別々に動いていると思われがちだが、実は駒同士が連携しているケースが多い」と指摘する。たとえば、敵陣を突破する「棒銀」戦法は、飛車の援護をつけた銀将を前進させていく連携プレーだ。強力な駒が後ろに控えるおかげで、銀の威力が増す。

将棋では形勢を判断する力が大事(2018年2月の朝日杯将棋オープン戦で勝利した後、対局を振り返る藤井聡太五段=右、当時=と羽生善治竜王)
「マンパワーが足りない」と不満を口にする前に、メンバーの目的共有は十分か、連携不足でエネルギーや時間を無駄にしていないか、確認する意味は大きい。加藤氏によると、持ち味や強みの異なるメンバーを上手に組み合わせ、個々の実力以上の結果を引き出すのも将棋らしい攻め口だという。
「思考の体力」鍛える
盤面をざっと眺めただけで、何手先で詰むか読めてしまうのは、一流棋士の驚くべき能力だ。でも、ある程度上達すれば、多少の先読みはできるようになるものらしい。「何度も状況判断を重ねるうちに、パターン認識の精度が上がって、何となく形勢が読み取れるようになる。『考える』というより、『浮かぶ』に近い感覚」(加藤氏)

2016年12月に対局した加藤一二三・九段(左)と藤井聡太四段(当時)。「最年長と最年少の棋士対決」と話題になった
盤面をみて攻めどきを見極め、弱点を突く。普段の生活では、なかなか養いにくい「攻める」感覚が身につき、形勢を読む経験値を積めるとすれば、ビジネス力のアップにも期待したくなるというものだ。
将棋界のレジェンドで、「ひふみん」の愛称でおなじみの加藤一二三・九段は、対局中にしばしば立ち上がり、相手の側に回って盤面を眺めたことで知られる。藤井七段も、ときにそんな発想を見せる。相手の側に立つという視点の転換法は、ビジネスにも生かせそうだ。加藤氏は「立場を入れ替えて考えるのに加え、相手を味方につけるような作戦にも頭を巡らせると、意外な落としどころが見つかりやすくなる」と話す。