「20代で一度は転職」のススメ リンクトイン村上氏
リンクトイン日本代表の村上臣氏に聞く
環境適応力を身に付けるのは若いうちにこしたことはないが、「遅すぎるということもない」と村上氏は強調する。自身も40歳にして初めて外資系企業に転職した。海外では50~60代の人がそれまでの経験やスキルを生かし、スタートアップ企業の役員として活躍する例が増えているという。「自分の子供と同年齢の上司から学べるか。OKなら働ける場所はいくらでもあるだろう」
「ソフトスキル」が求められるのは世界共通

日本の優秀な人材を世界とつなぐ窓を大きく広げたい
以上の3点は主に心構えを説くものだ。では、これからの時代に求められるスキルや能力は何か。リンクトインには世界中の企業から求人情報が寄せられるが、最近の傾向として村上氏は「ソフトスキルが重視されている」点を挙げる。
ソフトスキルとはヒューマンスキルとも呼ばれ、主に人間関係を円滑にするための能力を指す。具体的にはコミュニケーションやプレゼンテーション、会議などで多数の意見を取りまとめるファシリテーション、組織の参加者の士気を高めるリーダーシップなどだ。
「ネットで様々な情報が取得できるようになり、あらゆる業種で顧客が企業に求めるニーズの水準が高まっている」。ソフトスキルが重要視される背景について、村上氏はこう分析する。顧客は企業からの一方的な製品やサービスの提供には満足しなくなっている。顧客のニーズや課題に応えるには、これまで以上に企業が顧客に寄り添い、一緒に課題を解決していく必要がある。そこで役立つのがソフトスキルというわけだ。
そして、求められるスキルが変化するのも速くなっているという。例えば、IT(情報技術)業界では数年前から、最新のテクノロジーやトレンドを顧客にわかりやすく伝えるエバンジェリストという職種が注目されてきた。文字通り、「技術の伝道者」という意味だ。
ただ、村上氏はここにきて、エバンジェリストよりも、顧客同士あるいは顧客と企業のコミュニティーを盛り上げ、拡大していく人材を求める傾向が強まっているとみる。一方的に伝える形から、ともに意見を交わし合う形へ。企業と顧客の関係が変わる中で、「必要なスキルをいかに速く学び、自分のものにできるか。常にキャッチアップする姿勢が欠かせない」と説く。
働き方改革や外国人労働者の受け入れ拡大など、日本の労働市場は大きく変わろうとしている。「この時期にリンクトインの日本市場を任されたことに、大きなやりがいを感じている。日本の優秀な人材を世界とつなぐ窓を大きく広げていきたい」。自らキャリアを築いていく時代の働き方を、身をもって示そうとしているかのようだ。
1996年、青山学院大学の在学中にITベンチャーの有限会社電脳隊を設立。99年野村総合研究所に入社するが10カ月で退社。2000年電脳隊を統合した会社がヤフーに買収されたことに伴い、ヤフー入社。12年執行役員兼CMO(チーフ・モバイル・オフィサー)としてモバイル事業の企画戦略を担当。17年11月にリンクトイン日本代表に就任。
(村上憲一)