メルカリ会長、後輩に語った「打席に立ち続ける」ワケ

早稲田大学の起業家養成講座で講演するメルカリの山田進太郎会長兼CEO(2018年12月21日)
フリーマーケット(フリマ)アプリのメルカリが株式を新規上場してから半年あまり。共同創業者の山田進太郎会長兼最高経営責任者(CEO)は上場企業のトップとして責務が増したが、恒例となっている行事への参加は2018年も欠かさなかった。母校である早稲田大学が開く起業家養成講座だ。講演で強調したのは起業家として「打席に立ち続ける」ことの大切さだった。
インターネット起業を決断した、ある女性のひと言
昨年12月21日、午後4時半。早稲田キャンパスの505教室は約300の座席がほぼ埋まり、汗ばむほどの熱気だった。3カ月前に始まった秋期の起業家養成講座も残り4回。この日のテーマは「スタートアップのエグジット(IPO=新規株式公開)」で、山田氏は講師のひとりとして登壇した。
メルカリは6月に鳴り物入りで上場しており、この日のテーマは山田氏にうってつけのはずだ。だが、IPOについてはすでに別の講師が語っていたほか、「自分も入学直後に起業家の話を聞く機会があったが、リアリティーが湧かなかった」。持ち時間の大半を1996年の大学入学直後から現在までの振り返りに充てた。
「見ての通りのオタクなので、リーダーをやったことがなかった」。こう語る山田氏にとっての最初の転機は、ウェブサイトの制作などを手がけるサークル「早稲田リンクス」に入り、ここで3代目の幹事長を務めたことだろう。「リーダーとして目標に向かって一緒に走る面白さに目覚めた」という。
次の転機は26歳のときだ。卒業後はフリーのウェブエンジニアとして働いていたが、この分野の中心地であるシリコンバレーへの思いが募り渡米。縁あって現地で和食レストランを開業する準備を進めたが、事業パートナーだった女性のひと言で考えを改めることになった。
「最初はあなたも私もお店に立たないとダメよね」。当時、山田氏は学生時代に趣味として開いた映画のレビューサイトを運営していた。このサイトには毎月100万人が訪問していたが、「レストランでもてなすことができるのはせいぜい数百人、数千人だ」